エレクトレット・コンデンサマイク用電源アダプタ/バッファ・アンプ
- 実験用に製作したエレクトレット・コンデンサマイク(ECM)用の電源アダプタ/バッファ・アンプです. 小型のタイピン型マイク(例えばaudio-technica
AT9904, ATR3800)等を実験に用いるのに便利です.
- ECM用の電源供給機能を持たない機材のバランス入力のマイク端子にECMを接続して使用することが出来ます. バッファ・アンプ内蔵なので少々接続ケーブルが長くなっても問題ありません.
- バッファ・アンプ付きの2系統の出力端子があるので、音響制御実験中のマイク出力の録音/モニタにも便利です.
- 電源は単4電池2ヶで、エネループを使うと1ヶ月近く持ちます.(電源スイッチはありません).
左端の写真はバランス入力のUSBオーディオ・インターフェースとの接続例です. USBインターフェースの入力はXLRコネクタ/フォーン・ジャック兼用のコンボ・ジャックになっていて、アダプタを介して3Pミニプラグ付きのケーブルを接続しています.(金色に光っているのがコネクタの変換アダプタ)
製作した電源アダプタのマイク入力端子に刺さっているのはタイピン・マイクではなく、PCのマイク端子への直挿し用のL字型のボディのマイクです.
- 必要最低限のミニマムな回路ですが、実験用途にはこれで問題ありません. マイクへの電源供給のための負荷抵抗2.2kΩとゲイン0dBのバッファ・アンプがあるだけです.
- 3Pプラグ/ケーブルを用いてバランス入力の機器と接続すると、片側接地の擬似バランス接続(実質的にアンバランス接続)になります.
わざわざアンバランス出力のOPアンプを複数組み合わせて、いわゆる電子平衡出力の回路にするほどではありません. とにかく何でもバランス接続にすれば性能が良くなるというわけでもありません.(参考
: 簡易型の変換アダプタの製作例のページ → アンバランス/バランス(不平衡/平衡)変換アダプタ)
- 電源ラインのコンデンサ(100μF/22μF/0.1μF)は省略しないでください. 100μ/22μ/0.1μの代わりに100μ/10μ/0.1μや100μ/10μ/1μなどでもかまいません.
小型の電池の内部抵抗は意外と大きいので一応の配慮は必要です. この程度の回路で問題が出ることは無いはずですが、ディスクリート素子(トランジスタ)で組んだアンプやラジオなどでは電源ラインのコンデンサが無いと安定化電源では動くのに電池では正常動作しない、電池の種類によって動いたり動かなかったりするというトラブルが有り得ます.
- 部品調達の都合でその必要が無いところにも無極性コンデンサを使っています.
- 使用しているOPアンプの動作電圧の下限は1.8Vです.
PDF回路図 ecm_power_adaptor.pdf
- お客様には、ちょっとした音響実験をするのには無指向性(全指向性/音場型)のタイピン型のエレクトレット・コンデンサマイクをお勧めしています.(録音、FFT分析等の用途に気軽に使えます)
実験には何の問題も無い特性です. 高域の周波数特性のウネリがありますが、人間の可聴周波数上限近くで厳密な計測をするのでも無ければ気にすることはありません.
- ただしタイピン型マイクには以下のような注意点があります.
- 一般的なエレクトレット・コンデンサマイクは内蔵のインピーダンス変換器/アンプにJFETをゼロバイアス動作で使っているので、大振幅信号入力時の歪が大きくなります.
- 振動膜(振動板)が小径なのでS/Nは良くありません.
- タイピン型マイクで性能上の不都合があるならば、代わりに騒音計を使うのが便利です. 騒音計にはモニタ用のアナログ出力端子がついているので、高性能マイクロホンの代用になります. 専用アンプを必要とする計測用マイクロホンなどよりもローコストです.
選ぶなら計量法の検定を受けた製品を購入してください.(市場にはナンチャッテ騒音計・似非騒音計も出回っています)