ANCKIT3 − アクティブ消音実験キット
電子メールでのお問い合わせ、見積もりのご依頼等は kit cepstrum.co.jp の の部分を @ に変えたメール・アドレスへお願いします.
- 多くの出荷実績のあるANCKIT, ANCKIT2の改良新バージョンです. PCの性能向上により、DSP(Digital Signal Processor)ボードは不要になり、Windows
PCでアクティブ消音の演算処理をおこなっています.
- アクティブ消音は技術的に非常に難しいというほどのものではありません. しかし開発にあたってはデジタル信号処理(適応アルゴリズム等)だけではなく、音響の知識も必用となります. そのためにメーカーの研究所や教育機関などでも,意外とシステム構築に苦労されているところが多いようです.(実際に音が消えるようにするのには時間と手間がかかります)
ANCKIT3をご利用いただければ,動作確認済みのANCKIT3をベースとして無駄な手間をかけずにお客様オリジナルの消音システムを確実に開発することが可能です.
- ソースコードが付属しているので、プログラム作成に慣れていない方でもアクティブ消音システムの開発に取り組むことが出来ます.
- 取扱説明書は改訂作業中です. 下記の説明書は抜粋版になります.(まだ、まとまりの無い部分があることはご容赦ください)
- ■ 製品概要
-
- アクティブ消音実験キット(多数の出荷実績のある ANCKIT/ANCKIT2 の改良版です)
- 実験用ミニチュア・ダクト、ASIO対応USB接続オーディオ・インターフェース、マイク、スピーカー、マイク・アンプ/パワー・アンプ、ANCソフトウェアのソースコード等をすべて含むオールインワン・キットです. USBポートを有するWindowsパソコンさえあれば、購入後すぐに消音実験が出来ます.(出来る限り消音実験専用のPCを用意することをお勧めします. Intel
N95/N97/N100/N150/N200/N250 搭載ミニPC/ノートPCは使用可能ですが、ローエンドのAtomプロセッサ等を用いた超小型PC・組込PCには対応しておりません)
- 対応しているWindowsのバージョンは64bit版のWindows7/8/10/11です.(32bit版Windows7/8/10には対応していません)
- ■ 用途
-
- 消音システム開発
- 実スケールの消音システム開発のための試作・実験機材として(ANCKIT3のプログラム、機材を流用してWindows PCベースの実用レベルの消音システムを開発可能です)
- 教育
- デジタル信号処理の応用例の一つとしてアクティブ消音実験を
- より進んだ消音アルゴリズム研究のための実験機材として
- デモンストレーションj
- ■ キット内容
-
- 実験用ミニチュア・ダクト
- アルミ製、全長約1.4m、外径約30mm x 60mm(脚、マイク/スピーカー等の突起部は含まず) ケース入りのスピーカー/マイク取り付け済み
- ASIO対応USB接続オーディオ・インターフェース(A/D・D/Aコンバータ) 入出力2ch
- アンプ
- エンクロージャー入りスピーカー(ダクト無しの消音システムの実験用)
- マイク(無指向性タイピン・マイク.モニター用/ダクト無しの消音システムの実験用/アクティブ消音ヘッドホンの実験用)
- 接続ケーブル一式
- ANCソフトウェア
- ソースコード(FreeBASIC)も含まれています.(ただし高速演算ライブラリ、A/D・D/A入出力ライブラリのソースコードを除く)
- お客様の製品への組込・転用にあたって、ロイヤリティ支払い、使用許諾申請等は不要です.(使用許諾条件は下記をご覧下さい)
ご希望のお客様にはC言語のアクティブ消音プログラムのソースコードもご提供いたします.
- 取り扱い説明書 etc
- Windows PCはANCKIT3には含まれていません. 対応しているWindowsのバージョンは64bit版のWindows7/8/10/11です.(32bit版Windows7/8/10には対応していません)
- ■ プログラムの概要
-
- プログラムはFreeBASICで記述しています. 非常に平易なコーディング・スタイルで他のプロセッサ/システムへの移植も容易です.(C言語への移植も容易です)
- 消音アルゴリズムには標準的な filtered-x LMS アルゴリズムを用いています.
- FIRフィルタ、適応フィルタの高速処理にはOpneBLASを使用しています.
- ASIO対応USB接続オーディオ・インターフェースを用いたオーディオ入出力の処理にはPortAudioを用いています.
- 特別なコーディング・テクニックは使わず、複雑な最適化処理もおこなっていない、極めて平易なプログラム記述をしています.
- ■ 付属ANCプログラムの仕様許諾条件
-
- FreeBASI/C言語ソースコードの改変・転用、お客様が開発された製品への組込使用可.
- 製品組込にあたっての使用許諾申請、ロイヤリティの支払い等は不要です.(ただし第3者へのソースコード開示は不可)
- ANCKIT類似の実験キット/学習教材等への転用は禁止します.
- A/D・D/A変換ライブラリ、高速演算ライブラリのソースコードは付属していませんが、ソースコード無しでもライブラリは使用可能です. お客様が開発された製品でのライブラリ組込使用可、仕様許諾申請、ロイヤリティ支払い等は不要です. なお、高速演算ライブラリが無くても消音動作は可能です.
- ■ 納品時立会い・デモetc
-
- 納品時の立会い、お客様のパソコンへのソフトウェアのインストール作業、消音実験デモ、技術的な質疑応答等に対応可能です.
- 近県(都内、神奈川県etc)は無償、遠隔地へ納品の場合の対応については当社までお問い合わせください.
- ■ 価格
-
- 当社出荷価格(税別) \1,170,000.
- 教育機関向けアカデミック価格(税別) \540,000.
- 上記価格にはアクティブ消音プログラムのソースコードを含みます.
- ■ その他
-
- アクティブ消音システムの開発・構築に関する技術コンサルティングにも対応可能です. 詳細はお問い合わせください.
- ダクト無しの周期性雑音消音プログラム画面(左:secondary path伝達特性測定、 右:ANC動作)
周期性雑音のみを対象とした消音アルゴリズムを用いているので、適応フィルタ係数はバンドパス特性になります.(右のグラフ)


- 付属ミニチュア・ダクト概要
- 旧バージョンの ANCKIT2 には非周期性雑音の消音実験にも対応した折り返し構造、大重量のダクトを用いていましたが、ANCKIT3 では周期性雑音の消音にのみ対応した小型・軽量なものになりました.(modeling
delayを付加してのランダム・ノイズの消音実験は可能です)
- 旧 ANCKIT2 でのお客様の使用方法はアクティブ消音の基本原理の確認・基本技術の習得がメインで、マイク/スピーカー取付位置を変更しての実験のニーズは低いことが分かりました. そのため
ANCIT3 ではマイク/スピーカー取付位置を固定とする代わりに、内部構造を容易に確認できる透明アクリル窓を取り付けて見える化をはかりました.

付属ミニチュア・ダクト全景
マイク/スピーカー取付箇所、上流端の吸音材充填箇所には透明アクリル窓を取り付けて見える化してあります.
透明アクリル板を取り外して、開口部を別のマイク/スピーカーの取付用、ダクト延長用に使用することも可能です.



マイクにはエレクトレット・コンデンサ・マイクロホン(ECM)を用いていますが、外付けの電池ボックスを併用してECMへの給電機能を持たない機器にも接続できるようにしてあります. バランス入力の機器にも接続可能です.(擬似バランス接続)
市販のECMを改造してアンプ/インピーダンス変換器のFETに大振幅音入力時の歪低減用のソース抵抗を付加しています.(ソース抵抗無しのFETのゼロ・バイアス動作では、正弦波入力時のマイク出力波形をオシロで観測してはっきり分かるほど歪みます)
ミニチュア・ダクトのマイク部分回路図 mic_circuit.pdf

電池ボックス
CR2032 x2 (3V + 3V = 6V)
現在出荷中のバージョンは旧ANCKIT2を改良したANCKIT3です.
旧ANCKIT2からのおもな変更点は下記のとうりです. ANCKIT2同様にANCソフトウェアのソースコードが付属しています.
- 消音処理・制御にはパソコンのプロセッサを使用します. 取り扱いの面倒なDSP(Digita Signal Processor)ボードは不要になりました. パソコンのモニタにリアルタイムで適応フィルタの収束状況をモニターするグラフを表示できます.
- A/D・D/A変換には付属のASIO対応USB接続オーディオ・インターフェースを用います.
- 付属の実験用ミニチュア・ダクトを複雑な折り返し構造のものから、軽量な折り返し無しのものに変更しました.(重量約1/3) ダクト長が短くなったため、消音対象は周期性雑音のみになります.(modeling
delayを付加してのランダム・ノイズの消音実験は可能です) お客様が作成された十分な長さのダクトを用いた実験に ANCKIT3 を使用された場合はランダム・ノイズの消音も可能です.
- ダクト無しの消音実験、アクティブ消音ヘッドホン(ノイズ・キャンセリング・ヘッドホン)の構成の消音実験が出来るように、スピーカーと新たな消音実験プログラムを追加しました.
- 付属ミニチュアダクトを用いたダクト消音実験の構成
- ダクト長が短いため、消音対象は周期性雑音のみになります.
- お客様が作成された十分な長さのあるダクト/実サイズのダクトを用いて実験される場合、ランダム・ノイズの消音が可能です.
- 下図では消音対象の周期性雑音はWindows PCで生成していますが、外部のファンクション・ジェネレータ等を音源として用いることも可能です.

- 実サイズのダクト消音システムでのスピーカー/マイク配置は下図のようになります.(ANCKIT3を流用してシステム開発が可能です)

- アクティブ消音ヘッドホン(ノイズ・キャンセリング・ヘッドホン)の実験の構成
- 消音対象は周期性雑音のみになります.
- Audio Player 無しでの単純な消音実験も可能です.(エンジン、発電機器、給湯機器、ヒートポンプ、建設機械等の周期性雑音の消音実験になります)
- 下図では消音対象の周期性雑音はWindows PCで生成していますが、外部のファンクション・ジェネレータ等を音源として用いることも可能です.

- エンジン騒音等の消音システムのスピーカー/マイク配置は下図のようになります.
パワーアンプ/スピーカーに大出力のものを用いれば、ANCKIT3を使ってパソコンで簡単に消音実験が可能です) 付属のソースコードを移植して組込用のプロセッサ・ボード/DSPボード
や Raspberry Pi を用いたシステム開発、製品開発も容易です.

- ■ FreeBASIC(https://www.freebasic.net/)の概要
-
- ANCKIT3はプログラムの記述にオープンソース(GPL)/フリーのBASIC開発系FreeBASICを用いています.
- Windows/GUIプログラミングのお作法を知らなくても、古いMS-DOSのプログラミングの感覚で簡単にWindowsのGUIプログラムを作ることが可能です.(callback関数、イベント・ドリブンの プログラム記述など不要です) もちろんWindows
APIを用いたスタンダードなスタイルのプログラミングも出来ます.
- グラフィックスの扱いも単純で、縦横決まったピクセル数のサイズ固定ウィンドウにドット絵を描く感覚でお気楽にプログラミングできます.
- FreeBASICコンパイラは中間コードをC言語のソースの形で生成し、出力されたCプログラムをGCCでコンパイルして最終的な実行プログラム(exe)を作り出します.
FreeBASIC処理系はGCCをベースに構築されているので、C言語との親和性が高いのが大きな特徴です. C言語の Run Time Support
Library (RTS) をリンクして、C言語の関数をそのまま使うことが出来ます. FreeBASICとCの混用も容易です.
- C言語に慣れた方なら、FreeBASICのプログラムをC言語に簡単に移植可能です. web上にFreeBASICに関する多数の日本語の情報/リソースがあるので習得も容易です.
- ご希望のお客様にはFreeBASICのアクティブ消音プログラムのソースコードだけでなく、C言語の消音プロうグラムのソースコードも一緒にご提供可能です.(旧バージョンANCKIT2の Cソースコードもご提供可能です)
- 高速演算ライブラリ、A/D・D/A入出力ライブラリのソースコードは提供対象外です.
- ■ キット付属のUSB接続オーディオ・インターフェース(A/D・D.Aコンバータ)について
-
- Windows PCのオーディオ入出力には様々な問題点があることが知られています.
- ハードウェアはバス接続(PCIe)のサウンドボードを使用するのがベストなのですが、そうすると拡張ボードを内蔵可能なデスクトップPC以外は使えなくなってしまいます. 次善の策としてUSB接続のオーディオ・インターフェース(A/D・D/A)を使うしかないのですが、これに関してもクロック同期、サンプリング・タイミングのドリフト等の問題があります.
- ANCKIT3ではUSBオーディオ・インターフェースの問題点を回避するために下記のような対処をしています.
- ハードウェアには音楽録音に使用されるASIO対応のものを使用しています.
- ハードウェアとのインタフェースにはASIOを用いてプログラムを作成しています.
- サンプリング周波数は48kHzでA/D・D/A変換をおこない、ソフト的にサンプリング周波数変換をおこなってからサンプリング周波数8kHzでアクティブ消音の処理をしています.(サンプリング・タイミング/変換遅延のドリフトがあっても悪影響が1/6に低減されます)
- □ コラム : DSPかPCか?
-
- 適応フィルタの実時間の演算処理が必要なANC/アクティブ消音システムでは従来、処理にDSP(Digital Signal Processor)が使われてきました.
当然DSPで処理をおこなうためにはDSPボードが必要でした. ところが単純に演算能力だけを考えると、現在ではパソコン(PC)のプロセッサがシングルコアの汎用DSPを上回る性能を発揮するようになっているので、もはやDSPにこだわる必要はありません.
- ANC/アクティブ消音の処理における、DSPとパソコン(PC)のおおまかな比較をすると以下のようになります.
DSP
- カタログ・スペック上の単純な浮動小数点演算能力がPCより低くても、連続的な積和演算能力ではPCを上回る.(大規模な処理に適する)
- 次々に新しいDSP(LSI)が発売され、それに対応したDSPボードも新製品が出てきて陳腐化が早い.(DSPボードの製品寿命が短い)
- あるDSPボードから他のDSPボードへのプログラムの移植に手間がかかる. 細かい仕様の差異に対応した手直しが必要.
- 一般的に言ってDSPボードに搭載されたA/D・D/Aコンバータ回路の特性はあまり良くない.(デジタル屋さんが設計したデジ/アナ混載ボードなので、アナログ部分の性能はあまり重視されていない)
実際にあった事例として、大手DSPメーカーの純正DSP評価ボードでA/D入力にそれなりのレベルのクロック信号の漏れが混入するものがありました. ボード上の複数のクロック・ソース(水晶発振器)の差信号成分が音声帯域に落っこちてきていたようで、複数の周波数で正弦波雑音が生じていました.
PC(Windows PC)
- 単純な浮動小数点演算能力ではシングル・コアのDSPを遥かに上回る. ANC/アクティブ消音の適応フィルタの演算量程度であれば、DSPと同等以上の処理性能が得られる.(ANCはDSPを必要とするほどの演算量の連続的な積和演算ではない)
- 新しいPCでも基本的なハードウェア仕様は互換性が維持される. 同等仕様のPCをより取り見取りで選択できる.
- Windowsのバージョン・アップがあっても、基本的にはアプリケーションは手直し無しで新バージョンでも動作する. システムの移植は極めて容易.
- A/D・D/A変換は、性能的にはデスクトップPCでバス(PCIe)接続のサウンド・ボードを使用するのがベストだが、高性能のボードの入手性が悪く価格も非常に高価になっている.
USB接続のオーディオ・インターフェースには特性の良いASIOインターフェース対応のものがあるが、サンプリング・タイミング/変換遅延のドリフトがゼロでは無い. ANC/アクティブ消音にUSBオーディオ・インターフェースを用いるには相応のノウハウが必要.
-
- 総合的に判断すると、現在はANC/アクティブ消音システムの構築においてDSPにこだわる必要はありません.
DSPボードのハードウェアや個別のDSPに特化したプログラム開発に人的リソースを割くことが出来ない、一度作ったシステムの維持・更新に手間をかけたくない〜という場合はWindows
PCを用いることをお勧めします. PCとUSBオーディオ・インターフェースを用いた場合のノウハウを一度手に入れてしまえば、長期間にわたって安定したシステムの維持・運用が可能で、ハードウェアの更新も容易です.(ANCKIT3を用いればUSBオーディオ・インターフェース活用のノウハウ獲得は容易です)
- □ コラム : デスクトップPC用のPCIeバス接続高性能サウンドボード
-
- 業務用の高信頼ANC/アクティブ消音システム構築に適したPCIeバス接続サウンドボードについてご紹介します.
- 現在のWindows PCの各種インターフェースはUSB一択になってしまって、デスクトップPC用の高品位のサウンドボードはほぼLynx Studio TechnolodyのE22/E44のみになってしまいました. かつて性能の良いサウンドボードを販売していたRMEはMADI(多チャネルインターフェース)対応の高価な製品ばかりになってしまっています.
- E22/E44は小規模放送局・コミュニティFM局のPCベースの番組自動送出システムなどにも使われている、高信頼・高性能のサウンドボードです. 外部クロック同期が可能なので、外付けのクロック・ジェネレータと組み合わせて50kHz〜200kHzの任意のサンプリング周波数でのA/D・D/A入出力が出来ます.
- 当社ではお客様のご要望に応じてE22/E44を用いたシステム構築も可能です.(ANC以外のシステム開発も可能です)


Lynx Studio Technology
E22/E44
PCIe(PCI express)バスのE22/E44は、PCIバス時代の製品のバス・インターフェースをPCIeに変更したものに相当します. PICバスの製品から数えると非常に長い寿命を誇る安定した製品です
下記の情報は旧ANCKIT2のものです. 今後、順次ANCKIT3の最新情報に更新する予定です.
- 原則として納入実績は非公開ですが、過去にお客様の側から入札実績が公開されていたので、下記納入実績のみは公開させていただきます.
- 当社出荷価格(税込)\1,287,000. 教育機関向けアカデミック価格(税込)\594,000.
- 上記価格にはアクティブ消音プログラムのソースコードを含みます.
- アクティブ消音(ダクト消音)実験キット
- 実験用ミニチュア・ダクト、DSPボード、アンプ、スピーカー、マイク、消音ソフト(ソースコード付)等をすべて含むオールインワン・キットです. USBポートを有するWindowsパソコンさえあれば,購入してすぐに消音実験が出来ます.
- 対応OSはWindows 2000/XP/Vista/7/8/10です.
Windows 2000/ XPではANCKITキットに含まれているC6713 DSK付属の開発環境CCS Ver.3を用います.
Windows Vista/7/8/10ではTIが無償で公開しているCCS Ver.6/7/8を用います.(Eclipseベースの開発環境です)
- 教育
- デジタル信号処理の応用例の一つとしてアクティブ消音実験を
- より進んだ消音アルゴリズム研究のための実験機材として
- ダクト消音システム開発
- 実際のダクト消音システム開発のための試作・実験機材として
- デモンストレーション
- 実験用ミニチュア・ダクト
- DSPボード
- TI(Texas Instruments)製DSP評価キット C6713 DSK(浮動小数点DSP TMS320C6713 搭載)
- LED/スイッチ・ボード
- 当社製のDSK用LED/スイッチ・ボード、アナログ信号レベルのモニタ用のPWM出力端子付き
- アンプ/フィルタ・ボード
- 接続ケーブル
- ANCソフトウェア
- C6713 DSK用アクティブ消音実験プログラム
- すべてC言語で記述した平易なプログラムです. アセンブラは一切使用していません.
- 標準的な filtered-x LMS アルゴリズムを用いています.
- Cソースコードも含まれています. お客様の製品への組込、他のプロセッサ/プラットフォームに移植しての使用等に関しては,オリジナルもお客様が改変したものも使用許諾申請、ロイヤリティ支払いは不要です.(ただしANCKIT類似の学習教材,実験キット等への使用は認めません) オリジナル,改変版ともに第三者へのソースコード公開は禁じます.
- 取扱説明書 etc
C6713 DSK(DSPボード)+ LED/スイッチ・ボード
![[キット付属ミニチュア・ダクト全景]](anckit2photo/anckit2duct1.jpg)
付属ミニチュア・ダクトは折り返し構造で、内部管路長は3mを超えます.
マイクの取り付け位置を変更して、実効的な管路長を短縮しての実験も可能です.
スピーカー、マイクはアルミダイキャスト・ケースの内部に入っています.(蓋を開けて取り付け状態の確認が可能)
組み替えて直線構造のダクトにすることも可能です.(ただし別途連結プレートが必要)
- 射影アルゴリズム・ライブラリ(近日リリース予定)
- LMSアルゴリズムよりも収束が速く,安定性の良い射影アルゴリズムとそれを用いたダクト消音実験プログラムです. C言語のソースコードを含みます.(アセンブラは用いていません)
- お客様が製作された実サイズのダクトで実験をされる場合は,スピーカ駆動用のパワーアンプには大出力のものを外付けしてご利用ください. キット付属のアンプ/フィルタ・ボードに搭載しているパワーアンプはミニチュアダクト専用の小出力のものです.
- 教育関係のお客様には消音以外の各種実験・計測プログラムもご提供可能です.
- デモンストレーション等の用途に用いる場合は、プログラムをROM化してパソコン無しでスタンダローン動作させることも可能です.
- 他社製の類似製品には下記のようなものがあります.(仕様の比較にご利用ください) ANCKIT同様に実験用ミニチュア・ダクトとプログラムのソースコード込みでのパッケージ販売をしているかどうかは不明です.
- Causal Systems(オーストラリア)がマルチチャネルの汎用ANCコントローラ Tiger ANC を製造・販売しています. 以前は松下系の商社がCausal Systems 社のANC関連製品を扱っていましたが、現在どこが代理店になっているのかは確認が取れていません.
ANCKITで用いているLMSアルゴリズムを用いた適応フィルタ(下図左)の演算は,FIRフィルタの演算(FIR filter)とフィルタ係数更新演算(LMS
algorithm)に分けて考えることが出来ます(下図右)
![[適応フィルタの構成]](adpfil1.gif) |
 |
適応フィルタ |
FIR filter + LMS algorithm |
それぞれの処理の1タップあたりの実行クロック数と演算時間(C6713 DSKのクロック周波数225MHzの場合)を下表に示します.
normal:C言語のみで平易に記述したコード
fast :TIの信号処理ライブラリを用いて記述したコード
|
clock count [clock/tap] |
execution time [ns/tap] |
FIR filter |
LMS algorithm |
total |
FIR filter |
LMS algorithm |
total |
normal |
5 |
15 |
20 |
22 |
67 |
89 |
fast |
3 |
7 |
10 |
13 |
31 |
44 |
オプションの射影アルゴリズム・ライブラリの動作速度は下表のとおりです. 係数更新アルゴリズムがLMS algorithmから射影アルゴリズム(affine
algorithm)に代わります. FIR filter関数はTIの信号処理ライブラリを用いて記述しています.
|
clock count [clock/tap] |
execution time [ns/tap] |
FIR filter |
affine algorithm |
total |
FIR filter |
affine algorithm |
total |
affine |
3 |
8 |
11 |
13 |
36 |
49 |
マイクを1本のみ使った簡略化したシステム構成での実験結果です.(ファンはオフにした状態での測定結果です) エラー・センサー・マイクの出力波形を描いています.(横軸:時間,縦軸:振幅) 時間軸の約15秒の時点でANC動作をオンにしています. 時間と共に適応アルゴリズムが収束し,騒音レベルが低下している様子がわかります.
実際に音を聞いて消音効果を確かめてみてください.
anc02.wav (2813KB)
打ち消し前後の騒音スペクトルの比較のグラフです. (横軸:周波数,縦軸:音圧レベル)
水色:ANCオフ
紫色:ANCオン
2kHz以下の周波数で約10dB〜25dB程度の消音効果があります.
この構成は消音システムの基本的な動作チェックに用いられます. この構成ではダクト長の制約を受けずに消音実験をおこなうことが出来ます.
上の波形およびスペクトルのグラフは左図のエラー・センサー・マイク(ERROR)の出力信号の波形とスペクトルを描いたのものです.
実際のダクト消音システムに用いられる構成での実験結果です.(横軸:時間,縦軸:振幅) 時間軸の約15秒の時点でANC動作をオンにしています. オプションの小型ファンでは十分な音圧レベルが得られないので,スピーカから再生したランダム・ノイズの消音をしています.
実際に音を聞いて消音効果を確かめてみてください.
anc04.wav (5626KB)
打ち消し前後の騒音スペクトルの比較のグラフです. (横軸:周波数,縦軸:音圧レベル)
水色:ANCオフ
紫色:ANCオン
1kHz以下の周波数で20dB程度の消音効果があります. 取扱の容易さを考量したためにANCKIT付属ダクトは全長1.5mしかありませんが,もっとダクトが長い実際の消音システムではより大きな消音効果が得られます.
実際のダクト消音システムで用いられるシステム構成です.(ハウリング防止用フィルタなどを含みます) キット付属のソースプログラムを一部手直しするだけで,お客様が作成された消音システムにそのまま転用可能です.
加速度センサを用いた消音実験も可能です.(ANCKITには加速度センサは含まれていません)
左図はダクト消音システムの簡略化した構成図です.
ダクト上流からのノイズをセンスするためにマイクを使っています.
一方,マイクの代わりに,加速度センサを使ってノイズを検出して消音をすることも可能です. この構成には音響的なフィードバック・パスがありませんので,ハウリング防止用フィルタを省略することが可能です.(厳密には打ち消しスピーカから発生した振動の一部が加速度センサでピックアップされます)
実験例では騒音発生用スピーカのエンクロージャに振動検出用の加速度センサを取り付けています(旧ANCKITでの実験例). エンクロージャ内側には防振用のブチルゴムを貼り付けてありますが,それでも十分に加速度センサで振動検出可能です. 使っている加速度センサは電子血圧計用の周波数特性のあまり良くない圧電型のものです.
(左の写真の乱流発生用ファンはオプションです)
雑音検出にマイクを使った場合の実験結果です.
水色:ANCオフ
紫色:ANCオン
定在波を完全には抑圧できていないために,その影響を受けて周波数により消音量がばらつきます.
雑音検出に加速度センサを使った場合の実験結果です.
水色:ANCオフ
紫色:ANCオン
加速度センサの周波数特性の影響等のために消音帯域は狭くなっていますが,定在波の影響はみられません.
実際の消音システムでは,エンジン排気の消音をおこなう場合などに加速度センサを用いたノイズ検出手法を適用可能です. エンジンの振動エネルギーの一部が音響エネルギーとして放射されるのですから,音圧レベルを検出しても、加速度を検出しても同じことです.(コヒーレンスが大きければ問題ありません)
クランク軸の回転に同期した調波成分のみに対する消音をおこなうのであれば,マイクや加速度センサの代わりにクランク軸の回転数を検出する回転センサを使ってもかまいません.

排気口部分がバッフル状になっている場合は、左図のようなシステム構成も可能です. 十分なダクト長が得られない場合でも消音可能ですが、消音対象は周期性雑音に限られます. なお、、センサー用のマイクをダクトの外部に設置しているため、外来雑音の影響を受ける可能性があります.

吸排気部分を除いてエンクロージャーで完全に囲われている場合は、左図のような構成も可能です. 開口部から外部に漏れる周期性を有する騒音の消音システムとなります. この場合の消音対象周波数の上限はエンクロージャの物理的なサイズの制約を受けます.(消音可能帯域幅が狭くなります)
エコキュートの騒音対策にアクティブ消音技術を適用可能か?
最近、エコキュートの騒音問題が話題となっているようです. ANCKITはエアコン、冷蔵庫等のコンプレッサ騒音に関連した業務をされているところへの販売実績はまだ無いのですが、アクティブ消音技術は問題無くエコキュートにも適用可能です. ただし考慮しなければならない点がいくつかあります.
技術的に問題となるのは、web上で公開されている資料を見るとエコキュートの騒音には電源に同期した50Hz/60Hzの整数倍以外の周期音成分も含まれていることです.(エコキュートはコンプッサが2段構成になっているということですが、そのために電源非同期成分が発生するのでしょうか?)
50Hz/60Hz成分のみをアクティブ消音するならば、打ち消し音源も50Hz/60Hzのみを出力すれば良く、共鳴管方式やレゾネータ構造のもので小型化・効率化が可能です.



共鳴管方式、レゾネータ構造の打ち消し音源
50Hz/60Hz以外(以下)の周期音成分にも対応しようとすると、それなりの音響出力も必要ですから、例えばスーパーウーハー型の重くて大きい打ち消し音源が必要です.


スーパーウーハー型の打ち消し音源
もう一つの問題は、技術的にはアクティブ消音で対策が可能であっても、商品として考えるとそのコストを誰が負担するのか(負担できるのか)ということです.
一般向けの商品レベルでダクト消音が普及しないのも同じ問題があるからです. 騒音対策に後からわざわざコストをかけることは難しいので、自社製の大型発電機などに最初からアクティブ消音装置を組み込んで販売できる重電・重工メーカーやエンジニアリング会社以外はアクティブ消音を採用しづらいのです.(コスト的に後付の騒音対策商品とは成立しなくても、高額な自社製品に最初から組み込んで販売したり、工場出荷時取り付けのオプションとして提供することは可能)
騒音対策商品として成立しうるかどうかは別として、ANCKITを使ってエコキュートの低周波騒音の打ち消し実験は可能です. ダクト消音とほとんど同じ構成で実験出来ますが、打消し音源のアンプとスピーカー等は別途準備する必要があります. 詳細に関しては当社まで直接お問い合わせください
→ TEL (042)357-0621
ノイズ・キャンセリング・ヘッドホンの実験
プログラムに修正を加えて、ノイズ・キャンセリング・ヘッドホンの構成での実験も可能です. 消音対象は周期性ノイズとなります.
ノイズ・キャンセリング・ヘッドホンの構成での実験には付属のミニチュアダクトは使用しません. 実験用のスピーカとマイクはお客様でご用意ください. なお、付属ミニチュア・ダクトから取り外したマイクの流用は可能です.
システムのブロック線図は下図のようになります. C'はスピーカとマイク間のインパルスレスポンスCの推定値(測定値)をあらわします.(事前にCの測定をおこないます) 適応フィルタ(FIR+LMS)は周期性雑音を除去する予測器として働きます. マイク位置では外来の周期性ノイズは抑圧されますが、スピーカから放射された音楽はちゃんと聞こえます.(スピーカからはノイズを打ち消す逆位相信号と音楽が出力されます)

ノイズ・キャンセリング・ヘッドホンのシステム構成
マイク位置では周期性ノイズは抑圧されるが、スピーカから再生された音楽はちゃんと聞こえる.
実験時にはマイクとスピーカは密閉した容器に納める.
参考までにScilabによるノイズ・キャンセリング・ヘッドホンのシミュレーション結果を以下に示します.(ノイズ・キャンセラのオン/オフを切り替えた時の、マイク出力信号のwavファイルです) 意図的に適応フィルタの収束速度を遅く設定しているので、時間とともに周期性ノイズが抑圧されていく様子が良く分かります.
ノイズ・キャンセラ・オフ nc_off.wav (391KB)
ノイズ・キャンセラ・オン nc_on.wav (391KB)