近傍に音圧のヌル点を有するスピーカ・アレイ
- 平面波を放射しながらもアレイ近傍(マイク位置)に音圧のヌル点を形成可能な、拡声システム向けのスピーカ・アレイを実現可能です. 拡声システムのハウリング・マージン拡大に有効です.
- 素子数(スピーカ数)は最低でも10ヶ~20ヶ程度を想定しています.
- 音響の一般常識として、無響室内の実験で音場制御がうまくいったとしても、残響のある空間で良好な結果を得ることは困難です. ところが、このスピーカ・アレイは逆に残響のある部屋の方が良好な音圧のヌル形成が出来ます. 残響の存在を前提とした少し珍しい(?)手法です.
- 現実には広い周波数帯域にわたって鋭い音圧のヌルを安定して形成することは極めて困難ですが、低~中音域で6dB程度のヌルが得られれば実用上有益であると考えられます. 今後、実証実験をおこなう予定です.
概要 sp_array_abst.pdf (86KB) OHP発表資料 sp_array_ohp.pdf (485KB)
- もう少し詳しい説明
- 有効な制御が可能な周波数の上限は、音の波長とスピーカの素子間隔の関係、および空調・対流や室内の人の移動等による音響系のインパルス・レスポンスの変動により制約されます. 現状の予想としては、音圧のヌル形成の効果が得られる周波数の上限は1kHz前後でしょうか? 詳しいことは実験で確かめてみないと分かりません.
- スピーカとマイク間の距離が大きく、低い周波数でもハウリングの発生する可能性のある大きなホールや屋外の拡声システム向けの手法です. 小さな部屋ではあまりハウリング・マージン拡大の効果を望めないはずです.
- 制御フィルタの係数を求めるためには、事前にスピーカとマイク間の音響系のインパルス・レスポンスを測定しておく必要があります. 室内に聴衆が入っている状態でも、不快なテスト信号の代わりに録音しておいた音楽をスピーカから再生してインパルス・レスポンスを測定することは可能ですが、測定時間・測定精度に関しては検討が必要です.(講演会が始まる前に、聴衆に向かって音楽を何十分も流して測定をしなければならないのでは実用化は無理)
- マイクとスピーカ間に位置する話者(Talker)の影響は、スピーカ配置の工夫で軽減可能です.
- 減算型のアレイの構成なので、ヌル形成のために余分なエネルギーを必要とします. 余分なエネルギー消費というコストを支払って音圧のヌル形成をしているわけで、怪しげなトリック(?)を使っているのではありません.
- 近年、理論的に厳密な音場制御の研究が進んでいるのですが、ある場所で収録した音場を他の場所で再現することを目的としたものが多いようです. このように単純な手法で「合目的」的な音圧分布の設計をするという事例はあまり無いのではないかと思います.
- 厳密には遠方音場ではなく、近接音場となる近距離でも有効なヌル特性が得られるかという問題もありますが、これも実験をしてみなければ詳しいことは分からないと思います.(波長によってヌル形成可能な最短距離は変わります)