受信専用マグネチック・ループアンテナ
- 微小ループアンテナのメリット/デメリット(他のアンテナとの比較)
- このページでご紹介しているいわゆる微小ループアンテナは魔法のアンテナではありません. 他のアンテナと比較したメリット/デメリットを理解した上でご利用ください.
微小ループアンテナのゲインは0dB以下です. これだけを見れば性能の悪いアンテナということになります.
しかし、フルサイズのダイポール・アンテナや八木アンテナなどを使用することが困難で、ローディング・コイル入りの短縮アンテナを使用せざるをえないローバンドでは少し話が変わってきます. 極端に短縮率の大きいアンテナもゲインは0dB以下となりますから、同程度のゲインの低さであれば小型の微小ループアンテナの設置位置の自由度のメリットが生きてきます. 電界ノイズの影響を受けにくいのも微小ループの優位点です.
VHF帯以上では広帯域の受信用アンテナとしてディスコーン・アンテナなどを利用可能ですが、それと比較すると微小ループは指向特性のヌルを利用して妨害波の影響の低減を図ることが出来るのが特徴です. ハンディ・レシーバーのアンテナとして利用した場合、ホイップ・アンテナよりも非常に広い周波数帯域で使用することが出来ますが、逆に近接帯域の妨害波の悪影響を受けやすくなるというデメリットもあります.
- モニタリング用途に適した受信専用のマグネチック・ループアンテナです. 当社ではハンディ・レシーバと組み合わせて無線モデム,RFID等の電波のモニターに使用しています.
- 構造は EMI 関連の測定機材として販売されている Faraday shield を用いた磁界プローブそのものです.
- ゲインはありません.
- 同軸ケーブルを加工して簡単に製作できます. 構造は上図のとおりです. 左が対称型,中央が不平衡型です. モニタリング用途には不平衡型でもそれほど性能的に劣るところは無いようです.
- VHF・UFH帯の汎用受信アンテナとして使用する場合,ループの直径は 10cm〜30cm 程度にすれば良いでしょう. 中波〜短波を中心に使用する場合はループ径を大き目にしてください.
- 図の open の部分は同軸の網組(シールド)を 1cm 程度カットします. 細いケーブルで小径のものを作る場合は、カットする部分の長さも小さくしてください.
- 非同調・非共振型のアンテナなのでループ径にかかわらず中波・短波〜VHF・UHF帯まで使用出来ます.(もちろん低い周波数では感度が低下します) 近くに強力な局がある場合は混変調を受けやすくなるので,アッテネータや(アンプ無し・パッシブ型の)プリセレクタ,BPFが必要となる場合もあります.
- 少なくとも今時のちゃんとしたメーカー製受信機(固定機)と組み合わせて使用する場合、プリアンプを併用する必要は無いはずです. アマチュアが適当に作ったプリアンプを使っても見かけの感度が良くなるだけで、かえってNF(Noise
Figure)や混変調特性が悪化します.
- ハンディー・レシーバを自宅(固定)で使う場合などに,手軽に作れてそこそこの性能が得られます. ゲインはありませんが,屋外に設置すればそれなりのパフォーマンス向上が期待出来ます.(木造家屋の軒下に吊したり,マンションのベランダの物干し竿吊り金具にぶら下げてみてください) 遠距離受信を目的とした高性能アンテナではありませんから,気軽に作ってください.
- 水平面の指向特性は8の字形で,かなりシャープな null があります(上図右).
- 上記の終端抵抗を持たないマグネチックループ・アンテナのインピーダンスは非常に低い値(電流出力)になります. 入力インピーダンス50Ωの受信機に対しては、オーディオの分野で言うところのロー出し・ハイ受けの形になります. インピーダンスをアンテナ・アナライザ等で測定しようとしても、正常な測定結果は得られないはずです.
同軸ケーブルを使った不平衡型マグネチック・ループアンテナの製作例
(ループの根本から上は写真よりはみ出ています)
ループの直径は約30cmで,TV用の75Ωの同軸ケーブルを使っています. この程度のケーブル長の受信用アンテナではインピーダンスのミスマッチは大した問題にはなりませんが,工作のしやすさからも50Ωの同軸ケーブル(3D-2V,5D-2V等)を使った方がよいでしょう. 写真の白色外皮のTV用75Ωケーブル(3C-FV)は絶縁体が非常に熱に弱いので半田付けには注意を要します.
フェライトコアはEMI防止用として家電量販店・パソコンショップなどでも販売されている,クランプ・オン型のものです.
同軸ケーブルの先端にはピンプラグ(RCAプラグ)を半田付けして,BNC変換アダプタを使って受信機のアンテナ端子(50Ω)に接続しています.
ループの根本部分の拡大写真
TV用の安物ケーブルなのでシールドの網組がかなり荒いです.
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- 比較用のダイポール・アンテナ(あるいはグランドプレーンやディスコーン・アンテナ)と電界強度計や信頼出来るSメータのついた受信機を持っていないので,残念ながら厳密な性能測定はおこなっていません. 同じアンテナ高で比較した場合,VHF〜UHF帯では手持ちのハンディ・レシーバ付属のホイップ・アンテナ(左の写真中のレシーバの右側)と較べると,ループ径30cmのマグネチック・ループの信号強度の方が少し良い程度です.
- 長波〜中波ではレシーバ付属ホイップ・アンテナよりマグネチック・ループ(ループ径30cm)の方が圧倒的に高性能です. 左の写真のレシーバ(VR-500)には中波放送受信用のフェライト・バーアンテナが内蔵されていないので,付属のホイップ・アンテナをつけても鉄筋の部屋の中では中波ラジオ局は何も聞こえず,中波帯全域にわたってかなりレベルの大きいノイズがあります. 一方,マグネチック・ループでは,直径15cmの小型ループでも弱いながら中波局がよく聞こえます. とりわけノイズの少なさが大変印象的です.
- マグネチック・ループアンテナについての詳しい技術的解説は下記の資料をご覧下さい. 一番目の文献にはループの自己共振周波数についての記述もあります.
- トランジスタ技術(CQ出版)2005年7月号にもEMI測定用のマグネチック・ループアンテナの製作記事があります.(ここでご紹介したものとは少し異なる構成の製作例です)
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上の写真のハンディレシーバー VR-500とパソコンとの接続用のインターフェース回路は簡単に作成可能です. フリーのデータ転送・編集ソフトを用いてパソコン上でチャンネル登録データの作成・修正が出来ます. VR-500用のインターフェース回路は同種のインターフェース(1ワイヤ双方向転送)を用いている他機種にも流用出来るはずです.
- まさしくループが大きいだけのEMI測定用磁界プローブです. 指向性があるのがメリットであり、デメリットでもあります. 状況に応じて無指向性のホイップアンテナと差し替えて、ハンディレシーバとともに使っています.
- 使用したセミリジッド同軸ケーブルは 3D-6CT です. 秋葉原の小柳出電気商会(オヤイデ)で購入しました.
- 概ね10MHz以下のHFローバンド,中波・長波帯向けです.(現在評価中) 基板外形寸法は 210mm x 210mm です.
- プリント基板を用いるとストレー・キャパシティー等の影響のため,HF帯以上では感度が低下します.
- 写真の製品は中波帯以下では信号レベルがかなり大きくなるために,混変調特性の良い受信機でないと満足なパフォーマンスが得られません.(やわなハンディ・レシーバーは混変調でメタメタになります)