テレワーク、web会議・TV会議・ビデオ会議のための部屋の音響特性改善方法
- テレワークのweb会議(TV会議・ビデオ会議)のための部屋の簡単な音響特性の改善方法の紹介です. 厚手のカーテンやバスタオルを吊るすだけでもフラッター・エコー(鳴き龍現象)の対策になります.
- 部屋の真ん中で手を叩いてみればフラッター・エコーの有無はすぐわかります. フラッター・エコーがあっても気にはならないという方もいらっしゃるかもしれませんが、web会議のソフトに組み込まれているエコー・キャンセラの動作に悪影響を及ぼして音質低下を招く可能性があるので、適切なフラッター・エコー対策/吸音処理をしておくのがベターです.
- 企業の会議室には残響過多のところが多いようですが、そのような会議室の音響特性改善にも有効です. 高価な吸音パネルなどを使わずにすみます.
- なお、音楽受聴用のリスニング・ルームの音響特性改善には下記の手法は役に立ちません. 音楽再生で問題となる低次のモード(低音域)の定在波対策にはなりません.
- 吸音処理にはカーテンやバスタオルを用います.
- 通常カーテンは下図左のように窓に設置しますが、フラッター・エコー対策に用いる場合は下図右のように吸音処理をしたい壁面の前面に吊るします.
ポイントはカーテンの背後(壁との間)に空気層をもうけることです.(空気層で吸音力が増します)
- 空気層(壁とカーテンの間隔)は10cm〜20cm程度にすれば良いでしょう. 出来れば多めに距離をとってください.
- 使用するカーテンは布製の厚手の遮光カーテンが手ごろです. 高価な防音カーテン/遮音カーテンなるものを買ってくる必要はありません.
カーテンの代わりに大判のバスタオルを使ってもかまいません.
- 布製の遮光カーテンは遮光性能の良いものほど重いので、カーテンレールにはしっかりしたものを用いてください.
左:通常のカーテンの使用方法
右:フラッター・エコー対策のための
カーテンの使用法
- カーテンはプリーツを伸ばさず、下図右のように余裕をもって吊るしてください.(吸音に寄与する表面積が増えます) 当然ですが必要となるカーテン生地の幅は増えます. カーテンにはグラスウールなどの吸音材ほどの吸音率はありませんが、吸音されずに反射する音はプリーツでランダムに拡散されるのでフラッター・エコー低減に寄与します.
吊るしたカーテンを上から見た図
右のようにゆったりと吊るす
- 下の写真は本棚の前面にバスタオルを吊るして吸音処理をした例です. バスタオルの背後に10cm程度の間隔を空けています.(これはフラッター・エコー対策のためのものではなく、本棚正面のスタンドに設置したスピーカーから再生した直接音と本棚からの反射音の干渉の対策としたものです)
これでも室内での音響実験の結果にはっきりとした違いが出る程度の吸音効果・反射防止効果はあります.(バスタオルの大きさからして残響時間に違いが生じるほどではありません)
- カーテンやバスタオルを吊るして吸音効果が得られるのは、中・高音域のみです. 音声帯域より下の低音域の定在波対策にはなりません.
- 音楽鑑賞用のリスニング・ルーム等の音響設計においては、不要な空気層を作るのは意図せぬ残響時間の低下をまねくために忌避すべきこととされています.
- 高級オーディオ機器の販売店でリスニング・ルームのフラッター・エコー対策として、このページのようなカーテンを吊るす手法を紹介しているところがあるのですが、信じられない話です. 日本の一般家屋のリスニング・ルームでは常に残響不足が問題となるため、積極的に吸音素材を用いることなど常識的には考えられません.
オーディオ・マニアは音楽鑑賞ではなく、試聴・検聴のための実験室を求めているのだとすれば納得がいきます.
(ビデオ鑑賞やゲームのためのサラウンド・システムでは残響の少ないデッドな部屋の方が好都合です)
- リスニング・ルームの定在波対策、フラッター・エコー対策をするなら木製の家具を置いてください.(本棚、机、椅子etc)
ただし、ガラス戸のついた本棚やカラーボックスのような箱型の本棚は駄目です. 盆栽・植木鉢やプランターを置く棚のような骨組みと棚板だけの見た目のみすぼらしい本棚を用いてください.(無ければ簡単に作れるはずです) ぎっしりと本を詰めずに、適度に音を反射・拡散する程度の本・物を置いてください.
- オーディオ雑誌や音楽雑誌の読者のリスニング・ルーム拝見というような記事を見ると、座り心地の良さそうな優れた吸音特性を有するソファを置いている例が多いのですが、キリスト教の古い教会の信者席のようなクッションも無い簡素な木製の椅子に交換するだけでも部屋の音響特性は向上します.