μPC2002パワーアンプ
- μPC2002 (uPC2002) (NEC) を用いた出力4Wのパワーアンプです. 中古のアンプ内蔵スピーカの筐体とスピーカを流用して製作しました. 元のアンプ回路と電源トランスは取り外して、μPC2002パワーアンプとスイッチング型のACアダプタを中に押し込みました.
- このアンプを製作したのはちょっと昔(2008年頃?)になるのですが、その頃すでにμPC2002は廃品種となっていました. 廃品種のLSIを使った製作例をweb上で紹介してもしょうがないだろうと思っていましたが、秋月電子通商がまだ在庫を持っていて入手には困らないようなので公開することにしました. 海外メーカー製の同等品TDA2002はまだ現役のようです.
- 一般のパワーOPアンプ製品は正負両電源ですが、μPC2002/TDA2002はカーラジオ等の用途向けに単電源での使用を前提とした設計になっています. 電源には出力電圧15Vのスイッチング型のACアダプタを用いています.
- ケース/スピーカはハードオフで買ってきたアンプ内蔵スピーカMA-12(ローランド)を流用しています. 年代物の中古品なので、内蔵スピーカのエッジ部分が劣化していないか心配だったのですが、バラして確認してみるとゴム系のエッジを使っていて目立ったダメージは無いようでした.(ウレタン・エッジのスピーカはボロボロに劣化します)
- 回路はメーカーのデータシートに載っていたものに少し手を加えたものです.
- モノラルとステレオの2つの入力端子を設けています. ステレオ入力信号はR1, R2でモノ・ミックスしています. このような入力回路をつけておくと、ステレオ信号をモニターするのに便利です.
- ゲインは (R3+R4)/R4=(340+10)/10=35、20*log10(35)=30.9dB です. この種のパワーアンプLSIを使うコツは必要最低限の適切なゲイン設定をすることです.
- メーカーのデータシートの回路例は40dB〜50dB程度のゲイン設定になっていますが、ラインレベル(max 0.7Vrms程度)の入力電圧で用い、一般家庭でBGM程度の音量を出すのにはゲイン過大です. 実際にはボリュームを絞って使うことになるので、無駄にゲインを高く設定した分S/Nを損します.(半導体アンプではあまり心配する必要はありませんが、抵抗値の高いボリュームを使う必要のある真空管アンプでは、ボリュームを絞った状態だとストレー・キャパシティーの影響で高域の周波数特性も低下します)
- データシートの回路例ではR4=2.2Ωとなっていますが、手持ち部品の都合で代わりに10Ωを使っています. そのため少しS/Nで損をしています.(R4の値は小さい方が良い) 新規に部品を購入される場合はR4=2.2Ω、R3=68Ωとしてください.
- もし発振するなど動作が不安定であれば、R3とパラレルにコンデンサを入れてみてください. R3の値が小さいので、pFオーダーの容量では足りないと思います.
- L1, C7のフィルタ回路は安物のスイッチング型ACアダプタの出力雑音を低減するのに用いています. 品質の良い電源を使用される場合は、L1,
C7は不要です. なお、LCフィルタ回路には電源投入時のポップ・ノイズ低減の効果もあります.(電源電圧の立ち上がりが緩やかになります)
- μPC2002には放熱器が必要です. 今回の製作例ではアルミ製のリアパネルにμPC2002をネジ止めしています.
- MA-12の重たい電源トランスを取り外して軽量化したので、外に持ち出してデモや実験をするのに便利な機材となりました. パンチング・メタル製のフロント・グリルがついているので、スピーカーの破損を気にせず気楽に扱えます. スピーカが防磁型なのもありがたいです.
- 音質は可もなく不可もなく、かまぼこ型の周波数特性で、デモに使ったりBGM的に音楽を鳴らすのにはまずまずの性能です.
- さすがに音量を上げると、プラスチック製の筐体はベコベコ振動します. また、ピアノ曲を再生すると特定の音域でフロント・グリルが共振して、少々耳障りです. このあたりは値段相応というところでしょう.
- 実用上問題となるほどではありませんが、残留雑音は多めです. ボリュームを完全に絞った状態でも、耳をスピーカにあてるとはっきり雑音が聞こえます.
- 電源投入時のポップ・ノイズは気になるほどの大きさではありません. 電源ラインのL1, C7のフィルタ回路のおかげです.
- ポピュラーなアンプLSI LM386も、μPC2002と同様にゲインを欲張らずに使うのが、良好なS/N比を維持するコツです. LM386は下図中段のようにコンデンサを外付けしてゲインを稼ぐことが出来ますが、その代償としてS/Nが低下します. 元々、それほどS/Nの良いLSIではありませんから、単段で大きなゲインを得ようとするのは少々無理な使い方なのです.
- どうしてもゲインが欲しければ、LM386の前段にトランジスタやFET、または単電源OPアンプのプリ・アンプを外付けするのが無難です.(下図下段)
- 下図下段はJFETを使ったプリ・アンプとLM386を組み合わせた例です. JFETのソース側のバイアス抵抗がありませんが、入力信号の振幅が小さければ(max
0.1Vpp〜0.2Vpp程度)、ゼロ・バイアスでもちゃんとアンプとして動作します.