cubeSP(キューブエスピー) 無指向性スピーカー
cubeSPやその他の無指向性スピーカー、音響関連の細々した情報のblog形式でのご提供を始めました.
ぜひYAHOO!プログのcubeSPのページもご覧ください.
試作品の訪問デモが可能です. ソフト的な周波数特性補正の解説・実演も出来ます.
ただし対象は法人、教育機関、出版社・マスコミ関係等です.
個人、オーディオファンの方でも、マトリックス方式によるリスニングルームの残響補強にご興味をお持ちの方にはCubeSPを用いた残響補強のデモが可能です. ただし、クラシックや一部のジャズ以外の音楽ソースでは残響補強の効果が得られないことをあらかじめご了承ください.(効果は録音・編集スタイルに依存します)
詳細は当社までお問い合わせください. → E-mail dsp@cepstrum.co.jp
cubeSP カタログ cubesp_catalog.pdf (1060KB) cubeSP 外形図 cubesp_outline.pdf (12600KB)
cubeSP製品写真
概要 用途 特徴 特性データ 仕様 価格・購入のお問い合わせ おことわり
cubeSPの周波数特性補正方法の比較 別売イコライザ EQube(イーキューブ)
無指向性音源の効果 cubeSPの具体的な使用例 透過損失測定と遮音性能測定
cubeSP(正六面体スピーカー)と正十二面体スピーカーのメリット/デメリット 音楽再生用スピーカーとしてのcubeSP cubeSPのドライバ(スピーカー・ユニット)の特徴 cubeSPを開発した理由
ノートパソコンを用いた音響計測システムの構築について
スピーカーの大きさと指向特性の関係 楽器の指向特性の話 平面スピーカーの話
音楽再生用の無指向性スピーカーを簡単に自作する方法
- cubeSP製品写真
- 試作品ではSPユニット5ヶ搭載だったのを、設計変更して4ヶ搭載にしました. 形状の対称性が良くなるのでSPユニット4ヶの方が指向特性が向上します.(より理想的な無指向特性に近づきます)
- コネクタが付いている前面パネルが照明の影響で茶色がかって見えますが、実際にはアルミ無地の銀色です.
- 上面パネルの溝は、高域の周波数特性がフラットとなる方向を示すものです.
- 右側の写真のスタンド(小型三脚)はcubeSPの付属品ではありません.
- 写真のCubeSPはアルミ無地ですが、アルマイト着色加工が可能です.(有償オプション) 着色加工の都合上細かい色合いの指定は出来ませんので、ご容赦ください. サウンドインスタレーションなどの用途で、cubeSPが視覚的に目立たないようにしたい場合にアルマイト着色が有効です. 着色加工例はこちらの写真をご覧ください.(試作時のもので現在の製品とはSPユニット数が異なります)
右側の写真のスタンド(小型三脚)はcubeSPの付属品ではありません
- 概要
- 室内音響計測用の直方体(正六面体)無指向性スピーカーです.
- 72mm角の正六面体の側面に計4ヶのドライバ(スピーカー・ユニット)を配置しています. 底部にはカメラ用三脚への取り付け用のネジ穴を備えています.
- 高音域でも良好な無指向特性を有しています.(水平面は3kHzまで完全な無指向性) 指向特性は大型の正十二面体無指向性スピーカーよりも優れています.
- 汎用の無指向性スピーカーとして、一般的な音楽再生用途に用いることも可能です.
- 用途
- 個人宅のリスニングルーム、小〜中規模の教室・会議室・店舗・スタジオ、自動車のキャビン等の室内音響計測
- 各種音響実験、特に近似精度の良い無指向性音源(点音源)を用いる必要のある実験、音響計測の学生実験
- 各種音響システムのデモ
- サウンド・インスタレーションの音響信号再生
- リスニングルーム、小規模な店舗や待合室等での音楽再生・BGM再生
- 編集スタジオでのモニター(小型スピーカー、無指向性スピーカーによる再生を想定した試聴・検聴)
- マトリックス方式によるリスニングルームの残響補強
- 特徴
- 非常に小型で、筐体は一辺72mmの直方体です.(保護グリル、突起部をのぞく) スタンド無しでも平らなところに安定して自立します.
- カメラ用三脚に取付可能です. 市販のアダプタを使ってマイク・スタンドへの取付も出来ます.
- ドライバ(スピーカー・ユニット)保護用のグリルを備えているので取り扱いが容易です.
- NC加工されたアルミ製のボディと保護用グリルは堅牢で、いわゆる箱鳴り(筐体の不要な振動・共振)やグリルの共振の悪影響がありません. 筐体を構成するアルミ・パネルの板厚は6mmで、強度の高いステンレス・ボルトを使って組み上げています. 気密性維持のために組み立てにはシーリング剤を併用し、正確な噛み合わせと筐体表面へのシーリング剤のはみ出し防止のためにアルミ・パネル内側は複雑な加工がされています.
- 付属の小型密閉容器に収納して気軽に持ち運びが出来ます. 従来の音響計測用正十二面体スピーカーのような、大型のコンテナ型ケースは不要です.
- cubeSPは物理的サイズが小さいために良好な無指向特性を有し、比較的容積の小さな室内でのインパルス・レスポンス測定、残響測定、周波数特性測定等に適しています. 一方、大音圧を必要とする透過損失測定、遮音性能測定や大きなコンサートホールの残響測定等の用途向きではありません.
- 音圧不足によるS/N低下を補うための同期加算を用いたインパルス・レスポンス計測プログラムを当社よりご提供可能です.(同期加算によりS/Nが向上します) 同期加算をおこなえば、小学校・中学校の教室程度の部屋や暗騒音の大きな部屋でも音響測定が可能です.
ご提供するプログラムはインパルス・レスポンス測定のみに特化した単機能のものですが、測定したデータを既存の他の音響測定プログラムに転送して詳細な分析が可能です。
- ドライバ(スピーカー・ユニット)には公称径25mmと小型ながらも、チタン製ダイアフラムと二重構造のエッジを有する大振幅動作に耐えうるものを用いています.
- 低域の周波数特性補正のための専用イコライザEQubeもご用意しています.(受注生産) EQubeを用いずに周波数特性補正をおこなうための、補正データ/補正フィルタ係数(FIRデジタルフィルタ係数)もご提供しています.
正多面体の無指向性スピーカーはドライバ(スピーカー・ユニット)1ヶあたりのエンクロージャー容積が不足するため、低域の周波数特性にうねりが生じます. 周波数特性補正手段を提供していない他社製正多面体無指向性スピーカーは音響測定には不適です.
- 特性データ
- 周波数特性・指向特性(周波数特性補正なし、0/45°)
- 3kHzまで完全な無指向性です. 3kHz〜6kHz近辺でドライバ(スピーカー・ユニット)間の干渉による指向特性の乱れが見られるものの、6kHzから10kHz以上まで無指向特性を維持しています. 計算してみると、指向特性に乱れのある帯域の中心4.7kHzの音波の一波長が、qubeSPの筐体の一辺の長さ72mmに相当します.(340[m/sec]÷4.7[kHz]=340000[mm/s]÷4700[1/sec]=72[mm])
- 今後、追加の測定をおこなう予定ですが、斜め22.5°の方向で3kHz〜6kHzの周波数特性はフラットになります.
- 従来の大型の正十二面体スピーカーでは2kHz前後の周波数から指向特性に乱れが生じます. このグラフより、cubeSPはISO10140(ISO140)等の規格に適合した従来の正十二面体スピーカー製品よりも優れた無指向特性を有していることが分かります.
- 低音域が持ち上がるのは、ドライバ(スピーカー・ユニット)の大きさと数に対して容積不足気味のエンクロージャーを用いた多面体スピーカーに共通する特徴のようです. 他社の音響計測用正十二面体スピーカーは10dB以上の低域上昇特性を示します.
- 角度22.5°およびオクターブ・バンドでの測定データは近日公開予定(角度22.5°で4kHz付近が平坦な特性になります.)
- 仕様
- 外形寸法
- ボディ寸法(保護用グリルを含まず) 72mm x 72mm x 72mm (W x D x H)
- 保護用グリル、突起部を含む最大寸法 110mm x 110mm x 74mm (W x D x H)
- 外形図
- 重量
- 入力コネクタ
- ミニジャック(接続するプラグにはモノラル・ミニプラグを用います)
- 入力インピーダンス
- 能率
- 許容入力
- 20Wrms(破損しない短時間の許容入力電力です)
- 上記のスペックは連続入力で破損しないことや、過大な歪が発生しないことを保障するものではありません. なお、目で見て振動板がストロークしているのがはっきり分かる状態でも、すぐに壊れるようなことはありません.
- 全高調波歪率
- 1%(500Hz, 入力電力1W)
- 1%(1kHz, 入力電力1W)
- 最低共振周波数
- 付属品
- 接続ケーブル(平行スピーカー・ケーブル、長さ 5m、片側にL型モノラル・ミニプラグ取付済、もう一端は先バラ)
- 小型密閉容器
- 取扱説明書
- 保証期間
- 通常の使用状態において、出荷後6ヶ月以内に故障・不良が発生した場合は無償交換いたします.
- その他
- 底部にはカメラ用三脚への取り付け用のネジ穴(1/4inch)を備えます. ネジ穴深さは9mmです.
重量があるので、コンパクト・デジカメ用の簡易三脚は使用出来ません. 三脚は中型以上のフィルムカメラ用・ビデオカメラ用の堅牢なものをご利用ください.
- アルミ製の筐体は静電気による電撃防止用の抵抗(10MΩ)を介して入力コネクタのグランド端子(ミニジャックのスリーブ側端子)に接続されています.
- 予告無く製品仕様を変更する場合があることをご了承ください.
- 価格・購入のお問い合わせ
- cubeSP 185,000円(税別)、199,800円(8%税込)
- EQube(専用アクティブ・イコライザ) 92,000円(税別) 99,360円(8%税込)
- ご購入・技術仕様に関するのお問い合わせは E-mail dsp@cepstrum.co.jp まで
- 業務用の製品ですので、いわゆるインターネット通販はおこなっておりません. お客様からのお問い合わせに対して個別に見積書を発行します. 個人のお客様に販売する場合も同様の個別対応となります.
- おことわり
- 本製品には加工・組立時の細かい擦り傷や、ボルト頭部の六角穴の潰れ・変形等が生じている場合がありますが、不良ではありません. 当社の品質基準内の擦り傷等を理由にした返品・交換等には対応しておりません.
- 本製品は構造上、ドライバ(スピーカー・ユニット)の交換、エッジの張り替え、振動板・ボイスコイルの交換・補修は出来ません.
- 保護グリルは交換用のスペアを用意しています.(詳細は当社までお問い合わせください)
- 本製品を分解しないでください. 筐体パネルを固定しているボルトの取付には嫌気性接着剤を併用しています. 無理に分解しようとすると壊れます.
- 本製品の筐体は金属製のため、木製のエンクロージャーを用いた他のスピーカー製品と比較すると、冬季や静電気の起こりやすい環境での静電気問題(帯電・放電、放電による電撃等)が起こりやすくなっています. 静電気関連のトラブルに関しては一般的な静電気対策をおこなってください.(機器の操作前の除電処理、人体の帯電防止処理等)
- 本製品が特別に帯電しやすい(帯電しやすい樹脂を使っている)、帯電で壊れやすい(静電気に脆弱な半導体部品等を内蔵している)わけではありません. 人体が帯電した状態でcubeSPに触れると、急激な放電が生じやすいということです.
本製品の金属筐体は10MΩの抵抗を介して接続コネクタのグランド側端子に接続されているため、本製品に接続したスピーカー・ケーブルのグランド側(マイナス側)が正しく接地されている状態ではcubeSPが帯電することはありません.
- cubeSPの周波数特性補正方法の比較
- 周波数特性補正の方法は複数ありますので、用途に応じて適切なものを選んでください.
- もっとも単純なのはパワーアンプの前段でアナログ処理により補正をおこなう方法です. 一般的にはグラフィックイコライザや別売(受注生産)の専用イコライザEQubeを用います. CDプレーヤー等を用いて音楽再生する場合などにも適しています.
- D/A変換する前のデータに対してソフト的な補正処理をおこなうことも出来ます. ソフト的な補正にはフリーの Equalizer APO, SoX, Scilab 等を用います.
- cubeSPから再生した音源を用いて計測を行なう場合は、A/D側で周波数特性補正をおこなっても問題ありません. この場合も、アナログ処理による補正とソフトウェア処理による補正のいずれかを用いることが出来ます.
- 各種補正方法の詳細については、下記の説明をご覧ください.
- Equalizer APO を用いたソフト的な補正(IIRフィルタの実時間処理)
- Windows用のフリーのグラフィックイコライザ・ソフト Equalizer APO を用いて、パソコンのサウンドボードからのD/A出力時、またはA/D入力時にソフト的に実時間フィルタ処理をおこなうことが可能です. Equalizer
APOはWindowsの標準のオーディオ・システムのプラグインのような働きをします. 使用するサウンドボードや録音再生ソフトを選ばないので、非常に便利です. お客様が補正特性の微調整をされることも可能です.
- Equalizer APO設定例(その1)
400Hzの周波数特性の盛り上がりの補正のみをおこなうフィルタ特性と設定データは下記のようになります.
Filter: ON PK Fc 400 Hz Gain -6 dB Q 1
- Equalizer APO設定例(その2)
約150Hz以下のレベル低下の補正もおこなう設定例です. 低域の周波数特性の補正はこの程度にとどめておくのが無難です.
設定データの400Hzのゲインが-7dBとなっているのは、100Hzのフィルタの特性との干渉を考慮したものです.
Preamp: -6 dB
Filter: ON PK Fc 400 Hz Gain -7 dB Q 1
Filter: ON PK Fc 100 Hz Gain 6 dB Q 0.6
- Equalizer APO設定例(その3)
周波数特性が100Hzまでフラットになるように、+12dBのブーストをかけています. 少々無理な補正になるので、音楽再生にはお勧めできません. 適切にレベル設定された試験信号を用いた音響測定等の用途にご利用ください.
設定データの400Hzのゲインが-7dBとなっているのは、100Hzのフィルタの特性との干渉を考慮したものです.
Preamp: -12 dB
Filter: ON PK Fc 400 Hz Gain -7 dB Q 1
Filter: ON PK Fc 100 Hz Gain 12 dB Q 1
- Equaizer APOは次のインパルス・レスポンスの畳み込み(FIRフィルタ)による周波数特性補正も可能です.
- FIRフィルタを用いたソフト的な補正
- IIRフィルタではなく、FIRフィルタを用いたソフト的な補正処理も可能です. ソフトウェアにより補正フィルタのインパルス・レスポンスの畳み込み処理をおこないます.
- Equalizer APO を用いれば再生時でも録音時でも実時間処理ができます.
- 測定用途において、マイクから取り込んだ後のデータに対して、フリーのSoX(Sound eXchange)、Scilab 等を用いたオフラインでの補正処理も可能です. 概要はYAHOO!プログのcubeSPのページをご覧ください.
- FIRフィルタ係数(インパルス・レスポンス)
- インデックスあり
- インデックスなし
- wavファイル
- 1024tap44.1k.wav(1024tap, fs=44.1kHz)
- 2048tap44.1k.wav(2048tap, fs=44.1kHz)
- 1024tap48k.wav(1024tap, fs=48kHz)
- 2048tap48k.wav(2048tap, fs=48kHz)
フィルタ係数(2048tap, fs=48kHz)
FIRですが直線位相特性ではありません
意図して理論的に厳密な最小位相特性のフィルタを設計したのではありませんが、遅延は最小です
補正フィルタ周波数特性(2048tap)
100Hz以上の特性が平坦となるように補正をかけています
専用イコライザEQubeよりも200Hz以下の周波数の補正量(ブースト量)は大きくなります
20Hz〜70Hz近辺の細かいリップルは、設計の都合上ツールまかせで非整数比のサンプリング周波数変換をおこなった影響です(実用上の問題はありません)
もっとも良好な周波数特性が得られます
- このフィルタ係数による周波数特性補正は、cubeSPから再生した試験音をマイクで録音した後のデータに対して適用してください. 適切な信号レベル設定が出来ない場合は、cubeSPから再生する音源データの補正には使わないでください. 最低共振周波数以下のレベルが10dB以上も上昇するので、スピーカーの歪みなどの点から音源データ補正に使用するのは望ましくありません.
- グラフィックイコライザ(GEQ)
- 市販のグラフィックイコライザを用います. 市販の15バンド、レベル調整レンジ6dB/12dBのものをご利用ください.(31バンドの製品は設定が面倒です) パソコンを用いずに音楽再生等を行なう場合などの簡易な周波数特性補正に適しています.
- 100Hz〜400Hzの間に、100Hz/160Hz/250Hz/400Hzのバンドがあるものならば、微妙に仕様が異なっていても問題ありません.(例えば全体で14バンド、レベル調整レンジ10dB/20dB等)
- グラフィックイコライザ設定例(その1)
低域の周波数特性の盛り上がりのみを補正する、最も基本的な設定例です.(400Hzを6dBダウン)
- イコライザの周波数特性のグラフはBehringerのステレオ15bandグラフィックイコライザFBQ1502を用いて測定したものです.
- グラフィックイコライザ設定例(その2)
約150Hz以下のレベル低下の補正もおこなう設定例です.(100Hzを6dBアップ、400Hzを6dBダウン) 低域の周波数特性の補正はこの程度にとどめておくのが無難です. 20Hz/40Hz/63Hzのバンドは0dBのままで、適切な補正特性が得られています.
- イコライザの周波数特性のグラフはBehringerのステレオ15bandグラフィックイコライザFBQ1502を用いて測定したものです.
- グラフィックイコライザ設定例(その3)
周波数特性が100Hzまでフラットになるように、+12dBのブーストをかけています. 少々無理な補正になるので、音楽再生にはお勧めできません. 適切にレベル設定された試験信号を用いた音響測定等の用途にご利用ください.
- イコライザの周波数特性のグラフはBehringerのステレオ15bandグラフィックイコライザFBQ1502を用いて測定したものです.
- 厳密には製品によって仕様(Qの値)が異なる可能性があるのですが、ラックマウント型のグラフィック・イコライザでは極端に特性の違うものは無いはずです.(エレキギター用のイフェクタのイコライザは特性がバラバラです)
- ミキシングコンソールのパラメトリック・イコライザ機能でも同等の補正が可能です.
- 別売専用イコライザEQube(受注生産)
- 別売の専用イコライザEQubeを用いて補正をおこないます. 汎用性のある手法で、音楽再生にも適しています.
- 市販のグラフィックイコライザで同等の補正が可能ですので、ラックマウント型のグラフィックイコライザよりも小型・軽量の機材が必用となる場合などにご利用ください.
200Hz以下のブースト補正量は控え目になります
- 別売アクティブ方式専用イコライザ EQube(イーキューブ)
- cubeSPの周波数特性を補正する専用イコライザEQubeをご用意しています.(受注生産) 特性補正により低音域も平坦な周波数特性が得られます. cubeSPを駆動するパワーアンプと試験信号発生器の間にEQubeを挿入してご利用ください.
- 一般的な用途にはソフト的な補正や、グラフィックイコライザを用いた補正をおすすめします.
- 周波数特性
- cubeSPに使用しているドライバ(スピーカー・ユニット)の最低共振周波数が200Hzなので、200Hz以下の低音域は無理にブーストせず、ほどほどの補正(+6dB)にとどめています.
- 仕様
- 利得
- 入力インピーダンス
- 50kΩ(不平衡入力)
- BNCコネクタの入力端子も入力インピーダンスは50kΩです.
- 出力インピーダンス
- 100Ω以下(不平衡出力)
- BNC出力コネクタを備えていますが、50Ω/75Ω負荷での使用を想定した設計にはなっていません. 50Ω/75Ω負荷を接続しても壊れることはありませんが、出力信号が歪みます.
- 最大入力信号レベル
- 1Vrms(約3Vpp、入力アッテネータOFF)/5Vrms(約14Vpp、入力アッテネータON)
- 内部のジャンパ・ピンの設定で入力アッテネータのON/OFFを切り替え可能です
- 外形寸法
- 110mm x 140mm x 46mm (W x D x H、ただしコネクタ、ゴム足等の突起部を含まない筐体寸法)
- 重量
- 電源
- 006P電池(9V) またはDC 9V出力ACアダプタ(センター+、EIAJ統一極性型 #3)
- 電池とACアダプタの出力はダイオードを用いてOR接続されています. 電池とACアダプタを両方接続した場合、どちらか電圧の高い方から内部回路へ電源が供給されます.
- ACアダプタ使用時や本製品を使用しない時は出来る限り電池を取り外してください.
- 入出力コネクタ
- ミニジャック、ピンジャック、BNCコネクタ(入出力ともに3種類のコネクタを並列接続)
- 無指向性音源の効果
- 室内音響計測に無指向性のcubeSPを用いた場合と、一般の指向性を有するスピーカーを用いた場合の、計測結果の相違を以下に示します.
- 下図は五畳相当の残響のある部屋で、スピーカー/マイク間の距離を1.6mとして測定したインパルス・レスポンスです. 左側のグラフがスピーカーにcubeSPを用いた場合、右側のグラフがFostexのFF125Kを密閉型エンクロージャーに入れたものを用いた場合です. 時間軸を拡大した下段のグラフを見ると、cubeSPを用いた方が壁面や家具からの初期反射音パターンが明瞭に現れていることが分かります. 当然ですが、無指向性のcubeSPは直接音のレベルが小さくなっています.
(サンプリング周波数は44.1kHz、グラフの横軸はサンプル数です)
- さらにインパルス・レスポンスからSchroederのインパルス二乗積分法を用いてエネルギーの減衰曲線(残響曲線)を求めると、拡散性の良いcubeSPが綺麗な直線になるのに対して、一般のスピーカー(FF125K)では不自然な折れ曲がりが生じています.(スピーカーを反対向きにして測定しても同様です) このグラフからも無指向性のcubeSPが室内音響計測に適していることが分かります.
(縦軸の単位はdB、横軸はサンプル数です)
- 以上の測定にはカットオフ周波数100HzのHPFを併用しています.(デジタル・フィルタなのでカットオフ特性は非常にシャープです) そのため、暗騒音などの影響の少ない比較的綺麗な測定結果が得られています. HPFが無い場合は、下図のようにS/Nが大幅に低下します.
(縦軸の単位はdB、横軸はサンプル数です)
- cubeSPの具体的な使用例
- リスニングルーム、教室、会議室、スタジオ、自動車のキャビン等の残響測定、室内音響計測(試験音再生)
cubeSPから試験音を再生して計測をおこないます
- スピーカー・アレイ、音場制御システムの実験、デモ
音源を点音源としてモデル化した場合の実験
(特に残響のある部屋での実験)
- マイクロホン・アレイの実験、デモ
マイクロホン・アレイの音源分離特性をテストする際の点音源として
(特に残響のある部屋での実験)
- サウンド・インスタレーション
各種デモ音の再生
大きくて重い従来の無指向性スピーカーよりもスタンド設置の場合の転倒の危険性が少なく、安全性が向上します
大変小型なので視覚的にも邪魔になりません
- 小規模な店舗、待合室等でのBGM再生
無指向性なので部屋の中央に天井吊りしたひとつのcubeSPで室内全体をカバー出来ます(モノラル再生、ステレオ・ソースはモノ・ミックスして再生)
- 一般のリスニングルームでの音楽再生
高音域でも比較的均一な音圧分布特性が得られます
無指向性スピーカーとしてのメリットを得るためには、cubeSPを壁面から少し離れた位置に設置しなければならないことにご注意ください
小型スピーカー、無指向性スピーカーによる再生を想定した、編集スタジオでのモニター用途にも適しています.
無指向性スピーカーをメインのスピーカーに使ったステレオ再生システムはポピュラー系の録音向けで、ホールの残響成分(差音成分)を豊富に含むクラシック音楽等のソースには適していません. クラシック等の再生にcubeSPを用いる場合は、cubeSPをサブにした下記のマトリックス方式によるリスニングルームの残響補強をおすすめします.
- マトリックス方式によるリスニングルームの残響補強
cubeSPはマトリックス方式による差音成分を用いたリスニングルームの残響補強に最適です. リスニングルームとしては残響が不足気味になることが多い日本の一般的な住宅でも、豊かな残響による素晴らしい臨場感が得れます.
図中の係数 k の値(差音レベル)は1以下に設定します. k の最適値は録音(曲)やスピーカーの配置、リスニング・ルームの残響特性によって変わります.
差音成分 k(R-L)、k(L-R) は無指向性のcubeSPから全周に拡散されるので、メインのスピーカーからの直接音との干渉による音像定位の乱れの副作用が小さくて済みます.(cubeSPから直接リスナーの耳に到達する差音成分のレベルは、メインのスピーカーからの直接音よりも小さくなります)
図からわかるとおり、cubeSPから放射される差音成分は k(R-L)+k(L-R)=0 となるので、元の音源に含まれていない音を足しているのでも・引いているのでもありません.(0<k<1) また、人工的なエコーやリバーブを付加しているのでもありません.
残念ながら、残響補強の効果が得られるのはワンポイント・ステレオ・マイク的な録音・編集により、差音成分・ホールの残響成分が正しく収録されたステレオ・ソースに限られます. 具体的にはクラシック音楽、一部のジャズのライブ録音などで良好な効果が得られますが、セクションごとのマルチマイク録音が主流のポピュラー系のソース/録音では効き目がありません.
録音エンジニアの中には、残響補強効果が得られる自然な差音成分・残響成分が含まれるソースのことを、「位相が乱れていない録音」という独特の表現で評される方がいらっしゃいます.
マトリックス方式による残響補強の処理手法は、いわゆるスピーカー・マトリックスのサラウンド再生(4ch再生)と同一です. しかし、リスナーの後方にサブのスピーカーを設置したスピーカー・マトリックスでは、「後ろからも何か音が聞こえる」程度の曖昧な定位・サラウンド感しか得られません. サブの無指向性スピーカーを前方(メインのスピーカーの外側)またはリスナーの両サイド(斜め前方)に配置して、パラメータ k の調整により適切な差音レベルの設定をおこなった残響補強の方が自然な臨場感が得られます.
cubeSPを用いた残響補強の詳細についてはYAHOO!ブログのcubeSPのページもぜひご覧ください.
- 透過損失測定と遮音性能測定
- 透過損失測定と遮音性能測定の模式図を下記に示します. これらは大音圧の音源を用いて、部屋の外から中への「音漏れ」を測定するのが特徴です. 厳密な言葉の定義・使い分けがあるのではありませんが、残響測定やインパルス・レスポンス測定などの部屋の内部の音響特性の測定(室内音響計測)とは異なり、建築物(構造体)としての特性評価になるので一般に建築音響計測と呼ばれます.
- cubeSPはこのような大音圧を必要とする測定には適していません. あくまでも部屋の内部の音響特性の測定(室内音響計測)にご利用ください.
- cubeSP(正六面体スピーカー)と正十二面体スピーカーのメリット/デメリット
- 市販されているB&KやLarson Davis、Norsonic、BSWA Technologyの音響計測用正十二面体スピーカーは大型で取り扱いが面倒です. これらの製品がなぜ大きいのかというと、大音圧を必要とする透過損失測定や遮音性能の測定、室容積の大きなコンサートホール等での残響測定に用いることを想定して設計されているからです.(大音圧を出すために口径の大きなスピーカーを用いています)
- 一方、個人宅のリスニングルームや小規模な教室・会議室等の音響計測では大音圧の試験音源を用いた厳密な遮音性能測定はおこなわず、室内の暗騒音レベルの測定をおこなって周囲の環境の騒音レベルと部屋の遮音能力を総合的に評価するのが一般的です.(暗騒音測定にはスピーカーは必要ありません)
- 遮音性能測定が不要であれば、容積の小さな室内でのインパルス・レスポンス測定や残響測定、周波数特性測定にわざわざ取り扱いの面倒な大型スピーカーを使用するメリットはありません. 小型で設置作業や持ち運びの楽なcubeSPの方が適しています. 自動車の狭いキャビン内での測定も楽におこなえます.
- 現在ではTSP(Time Strethced Pulse)を用いてインパルス・レスポンス測定や残響時間測定をする場合、信号長を大きく取ってS/Nを稼ぐことが出来るので、むやみに大音量で測定をおこなう必要はありません.
- cubeSPのようにドライバ(スピーカー・ユニット)、エンクロージャーの物理的なサイズが小さいほど、スピーカー数が少なくても良好な無指向特性が得られます. 一方、大型のシステムと比較するとcubeSPの低音側の周波数特性は劣ります. しかし、容積が小さい部屋の低音域の音響特性は定在波の影響が支配的となりますから、cubeSPでの測定に適している環境ではそもそも非常に低い周波数領域での正確なレベル測定が必要とされることはありません.
- cubeSPの筐体は正六面体ですが、上部と底部にはドライバ(スピーカー・ユニット)がありません. したがって、垂直面では理想的な無指向性特性を得ることが出来ませんが、一般的な音響計測で重視されるのは水平面の指向特性(無指向特性)なので実用上の問題とはなりません.
- 音楽再生用スピーカーとしてのcubeSP
- cubeSPはその小ささからは想像出来ないクリアな音で鳴ってくれます. 材質が堅牢なアルミ製であることと、2つの対向する面に配置したドライバは互いに振動を打ち消すように動くために、エンクロージャーの振動・共振は皆無で余分な色付きの無い音質です.
- 大型の再生システムのような豊かな低音は望めませんが、非常にコンパクトな音楽再生用スピーカーとしてなかなかの実力を有しています. サウンド・インスタレーションの音響信号再生用途などにも最適です.
- 三脚で床から浮かして部屋の中央にcubeSPを設置した時に印象的なのは、音量を上げても主観的なうるささをあまり感じないことです.(モノラル再生) うるさく感じない理由は無指向で音の拡散性が良く、直接音と間接音のレベル差が小さいためでしょう.(相対的に直接音のレベルが小さい) 筐体の振動・共振による歪み感が少ないせいもあるようです. 実験・評価のために日頃聞き慣れた曲を再生していても、ついつい音量を上げすぎてしまいます.
- 無指向で拡散性が良く聴取位置を選ばないという特徴は、小規模な店舗・待合室などで天井吊りにしてBGMを再生するのに適しています.(モノラル再生)
- 残念ながら、クラシックなどの録音環境の残響成分を豊富に含むステレオ・ソースでは、無指向性スピーカーを使うと直接音成分過少になってしてしまうのか、いわゆる「中ヌケ」気味の物足りない音になってしまいます.(ステレオ・ソースをミックスしてモノラル化した信号ではこのような問題はありません) ステレオの無指向性スピーカーは音が良いと宣伝しているメーカーが多いようですが、そのようなところではクラシックやジャズのライブ録音などのソースでの試聴はしていないのでしょう. 一方、詳しい説明は抜きにして無指向性スピーカーのモノラルでの使用を推奨しているメーカーもあります.
- オーディオ機器らしからぬ機能第一のやや無骨な外観のcubeSPですが、この点についてはどうかご容赦ください.
ドライバ(スピーカー・ユニット)の保護用の目立つグリルは、これが無いと筐体の組み立て作業にも支障をきたします. このグリルのおかげでドライバに損傷を与える危険性が減り、気軽にハンドリング出来ます.(学生実験などの用途にも最適です) 代わりに開口率の低いパンチングメタルなどを使うと、スピーカーとしての性能が低下してしまいます.
- 有償の特注仕様として全体のアルマイト着色加工が可能です.(ただしステンレス・ボルトは着色出来ません) 技術的な制約のため、カラー印刷のような色の再現性が無いことはご了承ください. 詳細については当社まで直接お問い合わせください.
- cubeSPのドライバ(スピーカー・ユニット)の特徴
- 普通の小型スピーカー・ユニットでは、少し音量を上げただけでもコーン/ボイスコイルがふらついて締まりの無い音になったり歪んでしまいます. 一方、cubeSPに用いているドライバ(スピーカー・ユニット)は、かなりの音量でも音質に破綻無く平気で鳴ってくれます. 容積不足の小型のエンクロージャーやAV機器の筐体に内蔵し、無理矢理パワーを入れて使うことをあらかじめ想定したドライバ設計のおかげです.
- 具体的にはcubeSPに用いているドライバは、軽量で堅牢なチタン製ダイアフラム、強力な磁気回路と大入力/発熱に耐えうるボイスコイル、ボイスコイルのふらつき・傾きを押さえる二重構造のエッジを有しています. このドライバが無ければcubeSPほど小型の無指向性スピーカーは作れなかったでしょう.
- cubeSPを開発した理由
- 会議室や教室の音響測定に用いる可搬性の良い無指向性スピーカーが自社で必要となったのが、cubeSPを開発することになったきっかけです. B&Kなどの正十二面体スピーカーは持ち運びに不便ですし、コンシューマー・オーディオ向けとして市販されている多面体スピーカー製品には信頼しうるものが皆無だったので、やむなく自前で測定用スピーカーを作ることとなりました.
- コンシューマー・オーディオ向けの多面体スピーカーには、きちんとした特性の実測データが公表されているものさえありません. 中には無指向性をセールスポイントにしているにもかかわらず、原理的に無指向性とはなりえない構造のものもあり理解に苦しみます.
- 無指向性スピーカーを製造・販売している一部のメーカーの「楽器音や音声は無指向性である」などという主張に至っては絶句するほかありませんし、そのようなメーカーの製品を計測用途に使う気にはなれません.
- ノートパソコンを用いた音響計測システムの構築について
- cubeSPとノートパソコンを組み合わせて可搬性に優れた室内音響計測システムを構築可能です. この場合、問題となるのはノートパソコンのオーディオ入出力です. 残念ながらノートパソコン内蔵のオーディオ入出力機能は品位の低いものが多く、外付けのUSB接続のA/D・D/Aユニットを使ったとしても同時録音再生時のクロック同期等の問題があります. 音響計測に使用可能な性能を持った製品もあるかもしれませんが、実際に評価してみないと使い物になるかどうかの判断が出来ないのは困りものです.
- 一番確実なのはIEEE1394インターフェースを内蔵したノートパソコンと、IEEE1394接続のA/D・D/Aユニットの組み合わせです. IEEE1394のオーディオ信号伝送では、バイフェーズマーク・コーディングされたデジタル・オーディオ・データをそのままIEEE1394のデータ・ストリームに乗せるので、同時録音再生時のクロック同期等の問題も生じません.(USBとは異なり、IEEE1394ではオーディオ・データとサンプリング・クロック信号が同時に伝送されます)
- IEEE1394インターフェースのA/D・D/Aユニットのカタログや説明書を見て、デジタル入出力(S/PDIF)付きで、おなかつクロックソース/クロックモードのマスター/スレーブ(またはInternal/External)の切り替え機能が付いていることが確認出来できれば、その製品にはアナログ入出力での同時録音再生時にもクロック同期の問題は無いと判断して安心して購入出来ます.
- IEEE1394の比較的小型なA/D・D/AユニットとしてはM-AUDIOのProFire 610、MOTU(Mark Of The Unicorn)のUltraLite mk3 Hybridなどがあります. UltraLite mk3 HybridはIEEE1394とUSBのデュアル・インターフェースですが、同時録音再生で音響計測をおこなう場合はIEEE1394を使ってください.
- USBインターフェースの製品を使って同時録音再生の音響計測をおこなう場合は、事前にきちんと特性評価をしておくことをお勧めします. USB伝送に込み入った問題があるだけでなく、Windowsのシステム側の仕様の変遷もあって、製品ごとに評価しないとO.K./N.G.の判断が出来ません.
- スピーカーの大きさと指向特性の関係
- 定性的には、大音圧を得られる無指向性スピーカー・システムを作ろうとすると必然的に大型化し、大きな筐体で無指向特性を実現するためにはドライバ(スピーカー・ユニット)の数を増やさなければなりません. 一方、小型のスピーカーであれば音波の回折効果により、より少ないドライバ数でも良好な無指向特性が得られます.
- 少ない素子数で無指向性が得られるもっとも顕著な例は無指向性マイクロホン(音場型マイクロホン)です. 取り扱う音波の波長と比べて振動板のサイズが十分に小さいため、わずか一素子でも広い周波数範囲で無指向性となります.
- マイク並みに振動板(と筐体)が小さなスピーカーを作れば素晴らしい無指向特性が得られるはずですが、それでは蚊の鳴くようなを音を出すことしか出来ないでしょう. 試しにイヤホン/ヘッドホン用の小型ドライバを使って無指向性スピーカーを作っても実用にはなりません.(縮小模型実験なら話は別ですが) 結局、cubeSP程度のドライバ(スピーカー・ユニット)の数と大きさが、実用的な無指向性スピーカーとして成り立ちうる下限と考えられます.
- 楽器の指向特性の話
- 一般的な楽器はその発音構造と有限の大きさにより、無指向性にはなりませんし点音源として近似することも出来ません.(楽器の大きさよりも波長の長い低音域に限定した話なら別ですが) 人間の頭(人頭バッフル?)も有限の大きさを持つので、音声も完全な無指向性ではありません.
- もし本当に楽器が無指向性だというのならば、コンサート・ホールでオーケストラの特定の楽器が良く聞こえる席/聞こえにくい席など存在しないはずですし、ピアノの演奏会でグランド・ピアノの蓋(屋根)を反射板として使う必要も無いはずです.
- もし本当に音声が無指向性だというのならば、人間の頭と同程度の大きさの小型スピーカー(例えばパソコンのモニターの両脇に置いて使う小型のデスクトップ・スピーカー)をスタンドに取り付けて机や床から浮かせて使えば、無指向特性が得られることになります. ならば、わざわざ正多面体型の無指向性スピーカーを使う必要など無いはずです.
- 単に無指向だからという理由で、無指向性スピーカーが他のスピーカーより楽器音や音声を忠実に再生出来るというわけではありません.(無指向性スピーカーは音の拡散性が良いので、部屋の中央部に設置して用いるのには好ましい特性を有していることは確かですが)
- 楽器音や音声の指向特性について具体的に知りたいという方は下記の書籍をご覧ください.
安藤先生の著書は楽器音響の分野の古典ですが、その第12章のタイトルはそのものずばり「楽器の指向周波数特性」です.
- 平面スピーカーの話
- 平面振動板を用いた平面スピーカーというものがありますが、平面波を放射出来る周波数帯域は振動板の大きさにより制約されます. 当然ながら、振動板が平面であろうとそれよりも波長の長い低音域では近似的に点音源として振る舞うことになります.
- 拡声システム等の用途で実用的な距離減衰の少ないスピーカー・システムを作るのであれば、わざわざ振動板を平面にする必要は無く、普通のコーン型スピーカを多数アレイ状に並べればそれで十分な効果が得られます.
- cubeSPのドライバ(スピーカー・ユニット)の振動板は凹型をしていますが、代わりに平面振動板を用いたとしても無指向性となります. 一般的な室内音響設計の対象となる4kHz以下の帯域では、波長の方がcubeSPの振動板のサイズより大きくなります.
- 蛇足ですが、プリントコイルを用いた平面スピーカーには測定用の十分な容積を持つエンクロージャーにセットした状態では素晴らしい周波数特性を有するものがあるものの、市場で広く用いられるには至っていません. その理由の一つはプリントコイルの前後に磁気回路を配置したスピーカーの構造に起因する能率の悪さです. スピーカーを駆動するパワーアンプの方はデジタル化(D級アンプ化)して高効率となっているのに、ただでさえ電気エネルギーから音響エネルギーへの変換効率の悪いスピーカーの能率が低下してしまうのは時代に流れにそぐわないのです.
- 平面型だろうと一般的なコーン型だろうと、小口径のスピーカーほど能率が低下します. 残念ながらcubeSPも能率に関してはより大型のスピーカーにかないませんし、大音量での再生には向いていません.
- 音楽再生用の無指向性スピーカーを簡単に自作する方法
- 市販の自作用エンクロージャー(スピーカー・ボックス)を利用して、音楽再生用の水平面内で良好な無指向特性が得られるスピーカーを簡単に製作することが出来ます. スピーカー工作を趣味にしている方はぜひお試しください. 無指向性スピーカーのメリットがどの程度のものか、実際に体験出来るでしょう.
- 使用するのは正方形の小型密閉型エンクロージャー2セットです.(例えばダイトーボイス EX-10) ステレオなら4セット必要です. スピーカー・ユニットの準備もお忘れ無く.
- スペーサーを使って密閉型エンクロージャーを2つ積み重ねて固定するだけで、無指向性スピーカー・システムの出来上がりです. 2つのエンクロージャーの間隔
d は3cm〜5cm程度で良いでしょう. 間隔によって特性が変化するので、最適値は自分で探してみてください.(d の値と無指向特性が得られる上限の周波数の波長との関係を考慮してください)
- スペーサーはエンクロージャーの四隅に取り付けてください.
- エンクロージャーが大きすぎると、上下のエンクロージャー間の共鳴によって生じる高音域の周波数特性の山が顕著になるので注意してください.
- 上下のスピーカー・ユニットは同相接続にします. 同相であれば、直列接続でも並列接続でもかまいません. 並列接続の場合は、アンプの負荷が重くなることに注意してください.
- このような構成の無指向性スピーカーはしばしば音響実験に用いられます. 音響の専門家には良く知られた手法です.
- この無指向性スピーカーの困ったところは、床から浮かして使うための台/スタンドに手頃な既製品が無いことです. 大きさを考えると、cubeSPとは違ってカメラ用の三脚を使うことが出来ません. 使用者の方の創意工夫で対処をお願いします.