休止期間の無いTSPを用いたインパルス・レスポンス測定法のScilabシミュレーション・プログラム
- Scialb用の休止期間の無いTSP(Time Stretched Pulse)を用いたインパルス・レスポンス測定・残響測定のシミュレーション・プログラムを作成しましたので、ご興味をお持ちの方は試してみてください. TSPを用いた測定手法を理解するのに役立つと思います.
- ひととおりのコメントをつけてありますので、詳細はプログラム・ソースを読んでください. インパルス・レスポンスを求める畳み込みの処理には巡回畳み込み(円状畳み込み)を用いていることに注意してください.
- プログラム中の係数 alpha の値を変更すれば、通常の休止期間を有するTSPを生成することも出来ます.
- 休止期間の無いTSPとFFTを用いたアンプの周波数特性の測定例はこちらのページをご覧ください.
休止期間の無いTSPを用いたインパルス・レスポンス測定法のScilabシミュレーション・プログラム tspsim1.sci (3KB)
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被測定系のインパルス・レスポンス
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TSPを用いて測定したインパルス・レスポンス
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測定したインパルス・レスポンスから、Schroederのインパルス2乗積分法を用いて求めたエネルギーの減衰曲線(残響曲線)
少々雑音が混入しても測定が可能です
曲線がL字型に折れ曲がっているのは、インパルス・レスポンス長に対して積分区間の設定が過大だったためです
積分区間を変えればもっと綺麗な曲線になります
インパルス2乗積分法を用いた残響時間測定の注意点は専門書をご覧ください
- 一般的な音響測定・残響測定には通常の休止期間を有するTSP(Time Stretched Pulse)が用いられますが、上記のScilabシミュレーション・プログラムのように休止期間の無いTSPを用いても測定が可能です. 休止期間の無いTSPはスイープの初めと終わりがくっついた形になります.
- どちらのTSPを用いて測定をしても特別なメリット/デメリットはありません. 休止期間の無いTSPを用いた場合、Scilabのプログラム例ではFFTを用いた畳み込みの処理が一行
imp=fft(fft(res, -1).*fft(revtsp, -1), 1) で書けてしまうのは、分かりやすいと言えば分かりやすいです.
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通常の休止期間を有するTSPの波形の一例

休止期間を有さないTSPの波形の一例
TSPを用いたインパルス・レスポンス測定法はプログラム作成が簡単なので、DSP等にも容易に移植可能です. 下図はTIのDSP評価ボードを用いた室内のインパルス・レスポンス/残響特性の測定例です. インパルス・レスポンス測定をDSPでおこない、シリアルポート経由でデータをパソコンに転送して、パソコンで残響特性、周波数特性を求めてグラフ表示したものです. 上段の青色のカーブがエネルギーの減衰曲線(残響曲線)です.

このページでご紹介しているTSPは、OATSP(Optimized Aoshima's Time Stretched Pulse)と呼ばれることがあります. 歴史的経緯としては、周波数領域で特性の定義をおこない、それを逆フーリエ変換して試験信号の時間波形を生成するというオリジナルのアイデアはAoshimaによるものです. Aoshimaの手法を改良・最適化したもの(Optimizeしたもの)という位置づけで、ご紹介したTSPはかつてはOATSPと呼ばれていました. 現在はAoshimaのオリジナルのTSP(ATSP、Aoshima's
Time Stretched Pulse)が用いられることは無いので、特に断り無くOATSPのことをTSPと呼んでいます.