Interface誌記事補足:適応フィルタ入門(前編)
Interface(CQ出版)2013年2月号に掲載された記事「適応フィルタ入門(前編)」(225~228ページ)の補足説明です.
- サンプル・プログラムのダウンロード
- 受信機向けのノイズ・キャンセラ
- 記事中でノイズ・キャンセラの構成の適応フィルタの応用例として、受信機向けのノイズ・キャンセラを紹介しています. システム構成はコリンズ方式のノイズ・ブランカと類似した部分があります.
- Scilabとパソコンを使ったオフライン処理の実験は簡単に出来るはずです.
- インパルス・レスポンスの長い音響系を含まないので、適応フィルタのタップ長は短くてすみます. したがってDSPを使わずとも、高性能の乗算器内蔵組込プロセッサを用いて実時間処理システムを製作出来るはずです. プログラミングを頑張れば、比較的廉価な評価ボード(例えばSTM32F4DISCOVERY)を使えるかもしれません.
- オーディオ段にシャープなLPFがついている受信機を使うのであれば、A/Dの前段のアンチエリアジング・フィルタは省略出来ます.(DSPでオーディオ段のデジタル・フィルタの処理をしている受信機は、内蔵D/Aの後段に必ずLPFがついています) 分解能は12bitで十分ですから、組込プロセッサ内蔵の逐次比較型A/Dコンバータでも間に合うはずです.
- 厳密には受信機の検波段の特性(線形性/歪み)等が処理性能に影響するはずですが、高性能のエコーキャンセラなどではありませんから、特に気にするほどのことは無いでしょう.
- 2台の受信機は同じモデルである必要はありません. 受信機間の特性差があっても、適応フィルタはそれに「適応」します. 混信等の問題が無ければ、ノイズ受信用の受信機(下図の受信周波数2182kHzの受信機)は簡易なダイレクトコンバージョン方式のもので問題ありません.
- 記事の表現について
- 記事の前半部分に妙に表現が曖昧で不自然な部分がありますが、信号処理をまったく知らないソフトウェア系の読者にも分かりやすくしようとして編集部で原稿に手を入れて、逆に不明瞭になってしまった箇所です. 技術的に間違ったことを書いているのではありませんから、気にしないでください........
- また、不自然にトリミングされて、適応フィルタがゆっくり収束する様子が分からなくなってしまっている図面があります. ダウンロードしたScilabのプログラムを動して自分で収束特性を調べてみてください.
- 編集者が気を利かせて雑誌原稿の表現を分かりやすく直してくれることも多いのですが、逆にあれこれ考えすぎた添削が逆効果になることも希にあるのです. 月刊誌の厳しい編集・校正スケジュールではどうしても細かい問題が出てくるのは仕方ありません. 書籍化した時に誤記訂正や最新情報の追加等も含めて筆者が手を入れることになります.