振動でLEDを光らせる実験
振動ではなく、音でも電気を発生させることが可能です. 興味をお持ちの方は、ぜひ音の力で発電する実験のページもご覧ください.
テレビ番組で良くみかける空気圧で発電する実験のページもどうぞ.
- LEDは赤色の小型・高輝度のもの(白色LED、青色LED等は不可)
- シリコン・ダイオードは何でも良い
- ダイオードを2つとも発光ダイオードにしてもかまいません. 2つを逆向きに接続してください.
- セラミック圧電素子は出来る限り大型のもの(直径の大きいもの)を用いてください. ケース入りの圧電サウンダーや防犯用セラミック衝撃センサーを分解して取り出した圧電素子を用いても良いでしょう. 比較的入手しやすい大型のものとしては、秋月電子通商で扱っている径約35mmの製品があります.
- 左は直径27mmの圧電素子(リード無し)を用いて組み立てたもの. 素子単体で販売されているものを購入するときは「他励振タイプ」を選ぶ.
- 右はケース入りの圧電サウンダー. これを分解して取り出した圧電素子を用いて回路を組み立てても良い. 圧電サウンダーのメーカーとしてはFDK、村田製作所などがある.
- 上の写真の右側の圧電サウンダーから圧電素子を取り出して作ったもの.
- LEDを2ヶ使っている.
- いらない雑誌等の上に圧電素子を裏返して置く.(銀色の電極のある側を下にする)
- 部屋を暗くして、裏返した圧電素子をドライバー等で軽く叩くとLEDが光る. あまり強く叩くと素子が割れる可能性があるので注意してください. 小型の砲弾型LEDは指向性が鋭いので、LEDの正面から観察してください.
led_sounder.avi (6.6MB) 音はありません
led_sounder.mpeg(9.8MB) 音はありません
- 圧電素子を叩いて得られる電流(電力)は微々たるものですが、瞬間的に高電圧が発生します. 調子に乗って勢い良くたたいていると、過電圧のためにLEDがだんだん劣化して暗くなってしまいます.
- 教育機関などで、作成した発光モジュールを長期間繰り返して使用したいという場合は、下図のようにツェナーダイオード(ZD)を使った保護回路を取り付けてLEDの劣化を防ぐことができます. ただし保護回路無しでLEDが劣化する前の状態よりも、LEDは暗く光ります.
- ツェナーダイオードは電圧4.3V〜4.7V程度のものを使ってください. 適当なものが無ければ、5V前後のものを使っても特に問題はありません. 逆にツェナー電圧が3V程度の低いものでもかまいませんが、LEDの明るさが低下します. ツェナーダイオードの向きは下図の左右どちらでもかまいません.
- 部品代が高くなりますが、小型のソルダーレス・ブレッドボードを使えばハンダ付けなしで組立可能です.(秋月電子通商などで扱っています)
- オシロスコープで観測した圧電素子の出力波形. LEDを2ヶ逆向きに並列接続した回路で実験しました.
- 横軸は一目盛り 100ms、縦軸は一目盛り 1V. グラフ左端の小さな矢印(1→)のあるところが縦軸の原点(0V)です.
- パルス的に0V → 1.8V → -1.7V程度まで振れた後に、緩やかに0Vまで出力電圧が減少していますが、LEDが光っているのは頭のパルス状の波形をしている部分です.
- -1.7Vから緩やかに0Vまで電圧が減少している部分では、圧電素子の振動がおさまり発電は停止しています. 出力電圧はLEDの導通電圧以下になって、素子の容量に蓄えられた電荷がゆっくり放電しています.
- 上図の波形の頭のパルス部分を拡大したものです.
- 横軸は一目盛り2ms、縦軸は一目盛り1V
- LEDが点灯しているパルスの幅は4msほどです. グラフ左端の小さな矢印(1→)のあるところが縦軸の原点(0V)です.
- 瞬間的にLEDが点灯しても人間の目には
はっきりわかりますが、パルス幅が狭いので発生した電力はごくわずかなものです.
- 左の写真の単三型のニッケル水素電池の容量表示の単位はmAh(ミリアンペア・アワー、ミリアンペア
x 時)です.
- 圧電素子を一回叩いた時の発電能力を表すとすれば単位はmAms(ミリアンペア・ミリセカンド、ミリアンペア
x ミリ秒)となるでしょう.
- 圧電素子に衝撃を与えたときの電気エネルギーへの変換効率はなかなか良好です. しかし圧電素子で単三型ニッケル水素電池を充電しようとして、圧電素子を一日中叩き続けても一杯にはなりません. 携帯電話を充電するのも、ちょっと無理です.
- 人間の力を使って発電するならば、ニギニギ方式(?)の手動発電機の方がはるかに効率的です. 左の写真の発電機はニギニギしている間、連続的にLEDが明るく点灯します. これなら緊急時の携帯電話の充電装置としても実用になります.
- 30秒〜1分程度ずっと発電し続ければ、ニギニギを止めても内部のコンデンサに充電された電力で(輝度は落ちるものの)しばらくの間LEDが光り続けます.
- 人間の目には一瞬だがLEDが光るのがハッキリ分かるが、発生した電力は微々たるものである.
- 一般的に言って微少な振動や空間を伝播する音波のエネルギーを変換しても、大した電力は得られない. だから音響の専門家は振動や音を用いた発電技術にはまったく興味を示さない.(そのような発電手法は役に立たない・汎用性が無いことを知っている)
- もし機械・装置から十分な発電量が得られるほどの大きな振動が発生していたとしたら、それで発電するよりも機械・装置そのものの動作を効率化して振動が発生しないようにすることを考えるべきである.
- ただし、振動から発生する電力が微少であっても実用になるアプリケーションはある. 例えば、電池不要のリモコン、キーレスエントリー・スシテム、タイヤ空気圧監視システム、低ビットレート/間欠動作センサー・ネットワーク等である. これらは微少電力でも動作するマイクロプロセッサやセンサを用いて構成することが出来るので、振動エネルギーを電源とすることが可能である.
- したがって、振動発電・音波発電の研究に取り組んでいるのは音響屋ではなく、超低消費電力LSIとその応用システムの研究者や発電用圧電素子の研究者である. 当たり前だが、彼らは振動発電や音波発電で携帯電話を充電したり家電製品を動かそうなどは考えていない.
- 圧電素子に豆電球を接続して、豆電球を光らせることは出来るだろうか?
- LEDと比較して白熱電球(豆電球)は電気エネルギーから光への変換効率は低いものの、1桁以上も効率が悪いわけではない. ならば豆電球も光るのではないか?(効率の差がどの程度か調べてみると良いでしょう)
- 人間の目には圧電素子でLEDが光るのが見えても豆電球は光らないとしたら、その理由は何なのだろうか?
- 圧電素子で電力を発生させてLEDを光らせるデモを各所でしている会社があるが、なぜデモに白熱電球ではなくLEDを使っているのか良く考えてみましょう.
- 村田製作所がエレきっず学園で圧電セラミックスの実験「カチカチ発電機」を紹介しています.
- 少し工作の手間は増えますが、ビー玉を使って効率的に圧電素子を駆動しています. なかなかうまいやり方です.
- 使用するLEDについての細かい指定がありませんが、これを作る場合も赤色の小型・高輝度LEDを用いてください. 白色LEDや青色LEDだと暗かったり、うまく光らない可能性があります.
関連した話題として音波でエネルギーを伝送する実験のページもご覧ください.